2014年12月24日 19:51 弁護士ドットコム
東京駅開業100周年を記念した「限定Suica」の発売をめぐって大混乱が起きた問題で、JR東日本は12月22日、希望者全員が購入できるようにすると発表した。
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当初は1万5000枚の限定販売の予定だったが、12月20日の発売日に、購入希望者が東京駅の販売場所に殺到。混乱が生じたため、約半数が販売された時点で、販売中止となった。その後、販売された限定Suicaの一部がネットのオークションサイトに出品されたが、定価2000円のカードの落札価格は軒並み1万円を越え、なかには10万円以上で落札されたものもあった。
ところが、希望すれば誰でも購入できるようになったことで、「限定販売」というプレミアム感がなくなり、わざわざ高い価格で買う意味がなくなった。ある掲示板サイトには、「落札したSuicaをキャンセルしたい」という相談も寄せられている。こういう場合、キャンセルはできないのだろうか? 鉄道ファンでもある西口竜司弁護士に聞いた。
「ネットオークションといってもいろいろありますが、たとえば、ヤフオクで商品が落札された場合、その時点で、出品者と落札者の間で売買契約が成立します。
つまり、Suicaの出品者としては、売買契約にしたがい、金銭の支払いと引き換えに落札者に商品を渡せば足りる、というのが建前です」
西口弁護士はこのように述べる。落札者は契約を取り消せないのだろうか?
「たしかに、落札者としては黙っておけないでしょう。今後、JR東日本から『定価』で購入できるわけですから、すぐにでも契約を解消したいはずです」
契約を解消することはできるだろうか。
「今回のように、個人が出品するオークション上の契約を『特定物売買契約』といいます。簡単にいうと『物の替えがきかない』契約のことです。
もし、出品者から送られてきたSuicaが傷だらけだったり、折れて使えないような状態だったりした場合であれば、契約を解消して返金を求めることができます。これを『瑕疵担保責任』といいます。
しかし、今回のケースでは、いくら『限定Suica』が限定販売ではなくなり価値が下落しても、商品自体に何ら不備があるわけではありません。いわゆる『ノークレーム・ノーリターン特約』が有効なケースとなり、契約を解消することはできません」
では、オークションで購入した人は、あきらめるしかないのだろうか。
「出品者に直接連絡をして、取消しを求めることは可能です。
ただし、取り消すかどうかは出品者の判断に委ねられています。一方的に取り消すことはできません。
いったん落札したら、取り消しをするのは難しいでしょう」
西口弁護士は「一鉄道ファンとしては、このような転売行為等はやめてもらいたいですね」と話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/