パソコンなどの情報機器で、音楽を聴く人も多いことでしょう。音が生活に欠かせない要素になっている現代だからこそ、こだわりを持つ人もおりますし、機器の故障で一喜一憂する方もおいでになります。
PCサポーターのところにも、音に関する問い合わせが来ることは珍しくありません。サポーターの中には、故障時の機械音だけで問題箇所がわかるという強者もおりますが、ほとんどの人には限界というものがあるのです。(文:光明隠歌)
異常なしと答えても「僕の耳はごまかせないぞ!」と憤慨
あれは、3年前のクリスマスイブでした。「正しい音が出ない」ので修理して欲しいという、謎の依頼がコールセンターから届きました。正しい音ってどういうことよ、ピッチが狂ってるとかそういうこと? 電話を受けた人に確認しても、
「とにかく早く来て、直してくれの一点張りで…」
という非常に困った依頼。ちゃんと聞き出してくれよと愚痴っても始まらないので、さっさとお客様のところに行きました。切り分け用の小型スピーカーと、音楽CD(私物)を持っていくと、開口一番こう言われました。
「正しく歌ってくれないんです!」
ん? 何か嫌な予感はしますが、スピーカーの問題だのウィルスに感染したかもだの、お金は払うからというので一通り診断しました。しかし機器に異常はなく、ウィルスの感染もありません。診断結果を告げると、お客様は顔を真っ赤にして反発してきます。
「そんな訳はない! 僕の耳はごまかせないぞ!」
うーむ、困った。とりあえず聞いていただこうと、持ってきた音楽CDをプレイヤーに入れると「それが問題ないのは僕でもわかる。ちゃんと歌ってくれないのはこれだ!」と言ってお客様が再生したのは、ボーカロイドの「初音ミク」でした。
「ミクには調教作業が必要です」とも言えず…
「他の人みたいに、人間っぽく歌わないんだよ! 変な歌い方なんだ! これ、壊れてるだろ!?」
ああ、やっぱり。正しく歌ってくれない=パラメータ無調整ってやつですね。
「ミクには『調教作業』(様々なパラメータ調整)が必要です」
と言いかけて、さすがに思い留まりました。多分この表現が通じる相手だとは思ったのですが、あまりいい印象を持たれる言葉ではありませんし。
ともかく、ここから先はPCサポーターにできる作業はありません。PC周辺機器含め故障はなく、ウィルス感染もなく正常です。ソフトも問題なく、「後は使い方です」と告げて作業終了です。あとはボーカロイドを作ったメーカーのサポセンにお願いしたく思います。
筆者もその昔、MIDIを触っていたことはあるので少し知識がありましたが、ボーカロイドは触ったことがなく、具体的な「調教」まではアドバイスできませんでした。その辺は、むしろこういう仕事についてない人の方が、適切な回答をくれると思います、はい。
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