2014年12月23日 11:11 弁護士ドットコム
年末年始は、多くの人たちにとって、ゆっくり心身を休めることができる時期だ。だが、土日・祝日に関係なく営業しているサービス業などは、むしろ、忙しくなる時期かもしれない。ネットでは、ある企業がアルバイトに向けて「正月休みは許可しない」という張り紙を出したことが「ブラックすぎる」と話題になっている。
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ツイッターに投稿された画像は、スタッフルームの張り紙で、雇用者から従業員に向けたメッセージが書かれている。年末年始には働けないと申告したアルバイトに対して、そのようなことは認めないと告げる内容だ。「正月なので忙しいです。始めの面接の時も入れるか聞いています。そもそも大型連休入れない子は採用しません」「家族と一緒に、友達と一緒に、地方の子であれば実家に帰る等、この様な理由であれば許可しません」と呼びかけている。
このように、年末年始に休みを希望しているアルバイトに対して、雇用者側が拒否する姿勢をとることは問題ないのだろうか。労働問題にくわしい波多野進弁護士に聞いた。
「通常の会社なら、年末年始が休日になっていることが多いでしょう。しかし、コンビニやデパートなど、年末年始に営業することが前提となっている業態もありますよね。そういった職場では、アルバイトの休みの希望を拒否できる場合があります」
それはどんな場合だろう。
「労働契約の内容がどうなっているかが、まず問題になると思います。労働契約や、アルバイトに対して拘束力のある『就業規則』の中に、会社がアルバイトに対して、特定の日に業務に就くことを命令できる根拠がある場合です。そのような場合、使用者が年末年始にシフトに入ることを求めることは、形式的には許されうると思います。
ただ、いくら形式的な根拠があるとしても、シフト制を採用している場合、アルバイトの予定や希望を聞きながら、弾力的にシフトを組むのが一般的です。
この張り紙のように、使用者側がアルバイトの希望や予定を無視して一方的にシフトを組み、それに異議を唱える人を欠勤扱いするといった事例は、問題があるでしょう」
ただ、年末年始は特に忙しいので、シフトを組むのは大変そうだ。
「多くの場合、年末年始に営業する会社は、人のやりくりが大変です。ただ、通常は、アルバイトの予定や希望を聞きつつ、シフトを調整しますよね。
そうした努力や調整をする前に、使用者側が一方的に『シフトに入らないことを原則として認めない』とアルバイトに押しつけるところが、最大の問題だと思います。
やはり、労働者と使用者の関係は、継続的な信頼関係を基礎にしたものですから、使用者が労働者の希望を聞いたり、シフトの調整といった基本的な手順を踏まずに、アルバイトにシフトを押しつけるのは妥当ではありません。
業務命令権の濫用として許されない可能性があると思います」
波多野弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
波多野 進(はたの・すすむ)弁護士
弁護士登録以来、10年以上の間、過労死・過労自殺(自死)・労災事故事件(労災・労災民事賠償)や解雇、残業代にまつわる労働事件に数多く取り組んでいる。
事務所名:同心法律事務所
事務所URL:http://doshin-law.com