GDPの世界トップを競う米国と中国には、毎年11月に大規模セールがあり、この時期の売り上げだけで年間の黒字を賄うところもあるという。2014年12月16日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、この機に乗じて海外市場での巻き返しを図る日本企業の奮闘を紹介していた。
「14億人の生活が豊かになっているんだから、今を逃してはダメだ」
中国市場についてそう熱く語るのは、全国に326店舗を展開し、大阪に本社を構えるドラックストア・キリン堂の寺西忠幸会長だ。中国で3店舗展開してきたが、継続的な黒字を達成できず、1号店は今年9月に撤退を余儀なくされた。
毎年11月11日は「中国ネット通販最大のセール日」
そこで巻き返しを図るべく、キリン堂は中国最大のインターネット企業「アリババ」が運営するネット通販サイト「天猫tmall」(ティーモール)への出店を決めた。
中国では毎年11月11日にネット通販最大のセール日があり、1が並ぶことから「シングルデー」と呼ばれる。消費者の目が一斉にネットの値下げセールへ向かうこの日、一気に知名度も上げたい考えだ。
出店をサポートするアリババジャパンの呉さん(29)は、日本でヒットしたものを目玉商品にし、最も売りたいPB商品なども一緒に買ってもらえる売り方を提案してきた。
キリン堂・新事業開発部部長の伊藤雄喜さん(42歳)は、日本で6000万本の大ヒットとなったノンシリコンシャンプー「レヴール」を揃えることにしたが、「3万から6万本くらい用意してほしい」と言われ仰天した。
日本のリアル店舗330店舗でも3カ月かけて売る本数が、1日分だというのだ。しかし呉さんは「我々は販売できる自信があります」と言い切っていた。
とはいえセール直前には、あらかじめ船で大量輸送しようとしていたシャンプーに「高額な関税が課せられるかも」という危機的状況も発生した。無課税と聞いていたのに、利益の少ないセール品に関税が掛かれば大赤字だ。結局かからずに済んだのだが、伊藤さんは生きた心地もしなかったことだろう。
伊藤さんは、「中国は常にこういうことが背中合わせにあります。1店舗でも気を抜くと、こういった問題がどんどん出てくるのは事実」と難しさを語った。
10万人近い中国人相手に1億5700万円を売り上げ
セール当日、アリババのティーモールはパソコンをずらりと配置した運営会場で、24時間体制のセール対応を行っていた。キリン堂もリアルタイムで面白いように数字が上がり、現地スタッフは「チャリン、チャリン、チャリン、チャリンやで~!」と興奮していた。
神戸の配送センターで出荷対応に追われる伊藤さんにも途中経過の数字が報告され、「1億5700万円です!」と聞くと、居合わせた社員は歓喜に沸いた。セール品のシャンプーとリンス7万5000本も完売した。
売り上げはもとより、このセールで9万6000人もの中国人がキリン堂で購入し、知名度は一気に上がったことだろう。新しくできた大型ショッピングモールにも出店が決まっており、リアル店舗成功の足掛かりを作った。
番組ではそのほか、「無印良品」を展開する良品計画が、米感謝祭「サンクスギビング・デー」でのビックセールをきっかけに巻き返しを図る様子を紹介した。エコバッグをひとつ1ドル(約120円)で売り、バッグ自体をスタンプカードにするアイデアで、知名度とリピーターを獲得しようとしていた。セールでは米9店舗の売上は昨年より30%アップした。
巨大セールは知名度アップのチャンスだが一過性のもので、それを今後にどうつなげていくかが次の課題となる。人口の多い経済大国をターゲット市場にしたビジネスは、円安を背景にこれからも伸びていくだろう。特に中国ビジネスは、リスクがあっても魅力が非常に大きいことがはっきり分かった。(ライター:okei)
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