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<美濃加茂市長事件>検察側が1年6カ月求刑「市民の信頼を損ねた悪質な犯行」

2014年12月20日 12:11  弁護士ドットコム

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岐阜県美濃加茂市のプール浄化設備導入をめぐる汚職事件で、事前収賄罪などに問われている同市の藤井浩人市長に対する論告求刑公判が12月19日、名古屋地裁であった。検察側は、藤井市長が「安易に賄賂を受け取り、職務権限を私物化した」として、懲役1年6カ月と追徴金30万円を求刑した。論告では、現金30万円を手渡したとする贈賄側業者の証言について「極めて信用性が高い」とする一方で、市長本人の陳述や弁護側証人の証言をことごとく否定。「市民の信頼を損ねた悪質な犯行だ」と藤井市長を批判した。(ジャーナリスト/関口威人)


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●中林社長とのヤミ取引「存在しない」


2時間にわたった論告のなかで、検察側は、設備導入の便宜を図ってもらうために現金を渡したとする贈賄側の浄水設備会社「水源」の中林正善社長について、「供述内容は一貫しており、客観的な証拠や関係者の証言とも符合し、信用性に疑いはない」と主張した。



客観的な証拠としては、藤井市長との現金授受があったとされる日(今年4月2日と25日)に、中林社長が別々の銀行口座で、15万円を出金してから5万円を入金、90万円を出金してから70万円を入金するといった出入金をしていたことを示す記録をあげた。



また、関係者の証言として、中林社長の知人の話を重視。中林社長が、美濃加茂市内の中学校に設置された浄水プラントを案内した際に、知人に対して「市長への賄賂」をほのめかしたうえで、「30万円」という額を口にしたのだと強調した。



一方で、弁護側が指摘する「ヤミ司法取引」の疑いについては「存在しない」と反論した。中林社長がかかわった融資詐欺は計4億円近くあったが、すでに返済されていたものもあることから、まず2件の事件についての捜査を優先。そのうえで、「弁護側の告発を受けたことなどもあり」追起訴したと説明した。



検察側は、中林社長が「自分のやったことをゼロにして社会復帰したい」と願い、すすんで真実を話していると主張。詐欺事件の一部の立件を見送る代わりに贈賄事件をでっち上げたとする弁護側の主張を「憶測だ」と否定した。



●弁護側証人の証言を否定


中林社長と留置中の隣の房で知り合い、弁護側の証人として「中林社長が捜査当局とつじつま合わせをしていた」などと証言したO氏については、「新聞報道で知った弁護人の主張に沿った証言をした」と決め付けた。



中林社長が4月下旬、現金授受の席にいたのが2人か3人か「人数が合わない」などと漏らしていたとするO氏の証言も、「4月13日には取り調べで示した伝票から人数が特定されていた。4月下旬に『合わない』などと言うはずはない」と主張。これに対しては、弁護側が「4月13日の捜査報告書が開示されていない」と疑義を呈した。



藤井市長と中林社長が会った2回の現場に同席していた共通の知人T氏についても、検事は不信感をあらわにした。



証人尋問でT氏は「席を外したことはなく、現金のやりとりは見ていない」と証言したが、検察側は「取り調べでは席を外したかどうかについて『そこまで覚えていない』としていたのに、公判では記憶として覚えていると話した。根幹部分の供述が、被告人に有利になるよう不自然に変遷している。合理的な説明とは言えない」と切り捨てた。



●藤井市長を「脇が甘い」「逃げている」と批判


藤井市長については、 中林社長に「いつもすみません」などと言いながら現金を受け取っていたとしたうえで、「脇の甘さを表している」と表現。「自己に不利益になることについて、最終的には『覚えていない』『わからない』などと、あいまいな供述に逃げている。何ら合理的な説明ができていない」と批判した。



市長本人が「災害備蓄品について一般論として聞いた」とする美濃加茂市議会での市側との質疑についても、浄水プラントのことだと捉えた総務部長の答弁を訂正したり、再質問したりすることがなかったとしたうえで、実質的に「浄水プラントの導入を促す発言や質疑をしたと認められる」と指摘した。また、担当課にプラントの資料を渡して前向きな検討を求めるなど、「議員としての権限と影響力を行使した。職務権限を露骨にちらつかせた」と主張した。



検察側の論告は2時間に及んだが、その最後は次のような強い言葉で締めくくられた。



「安易に賄賂を受け取り、それと引き換えに本来なら実現できない浄水プラントを実現させ、市民の意見を代弁するべき政治で職務権限を私物化した。公務員の倫理観が問われる中、市民や国民の信頼を損ねた悪質な犯行で、社会的な影響は大きい。厳重な処罰が求められる」



検察側の求刑は、懲役1年6カ月と追徴金30万円。それを受けた弁護側の最終弁論は、12月24日に行なわれる。これまでの公判の経過から、弁護側が徹底的に反論することが予想される。



(弁護士ドットコムニュース)