2014年12月18日 16:11 弁護士ドットコム
インフルエンザが流行のシーズンを迎えた。国立感染症研究所によると、2014年12月10日の時点で、1週間あたりの患者数が16万人と推定されるという。インフルエンザは予防が重要だが、勤務先の会社からワクチン接種を推奨されることもあるだろう。
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あるネットの掲示板では、高齢者施設の厨房で働くパート従業員が、会社から、ワクチン接種を義務づけられたと書き込んでいた。高齢者にインフルエンザをうつさないためという理由なのだが、この投稿者は「人にうつさないためと言われると抵抗を感じます」と、ワクチン接種を拒否することを考えているようだ。
一般的には「痛いのが苦手」などの理由で、予防接種を嫌がる人も多そうだが、会社からのワクチン接種命令に従う義務はあるのだろうか。原英彰弁護士に聞いた。
「原則として、ワクチン接種命令に従うべき義務はありません。
ワクチン接種は、可能性は低いものの、副作用のリスクがあります。また、ワクチン接種以外でも、インフルエンザ等の蔓延を防ぐべき手立てはありますので、まずはそちらを優先的に行うべきです」
では、接種を業務命令として命じたのに従わなかった場合、懲戒処分はできないということか。
「いかに就業規則等の労働契約上の根拠があったとしても、そのような業務命令の必要性や合理性は認められないため、ワクチン接種を業務命令として命じることはできません。
そのため、拒否したからといって、懲戒処分を科すことはできないと考えるべきです」
例外は認められないのだろうか。
「例外的に、医療従事者など、患者に接する機会が多く、かつ、感染してしまった場合に感染拡大を招く業務に従事する労働者に対しては、就業規則等の労働契約上の根拠があれば、ワクチン接種を命じることができると考えられます。
『新型インフルエンザ』の予防接種については、業務命令に基づいて接種を受けた医療従事者に副作用などが発生した場合、労災として取り扱う通達も存在しています」
この相談者のように高齢者施設で働く場合は、どうなのか。
「高齢者施設の厨房で働く人に予防接種を命じられるかどうかですが、医療従事者のような高度な接種の必要性はないと考えられます。
調理に当たって感染予防の処置を取ったり、感染の兆候がでたスタッフの出勤を禁じたりすることで対応するべきです」
原弁護士はこのように語っていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
原 英彰(はら・ひであき)弁護士
人事労務を中心に、企業法務を中心に取扱う。企業側の立場での団体交渉の経験が豊富で、週1回ペースで出席している。
事務所名:竹林・畑・中川・福島法律事務所
事務所URL:http://www.thnflaw.com/