インターネットによって、データベースを介して仕事と人をマッチングさせることが容易になった。しかし似たような総合転職サイトが乱立したことで、必要な求人情報を得るのがかえって難しくなっているのが現状だ。
特定分野の求人を探す人たちに効果的にリーチするために、企業もウェブ系や飲食、など業界や職種ごとに特化した転職求人サービスにシフト始めている。そんな中、アスタミューゼ(東京・千代田区)が、「細かすぎて伝わらない」ニッチな専門性に特化した求人サイトを展開している。
分野はマニアックだが、求人企業は豪華
アスタミューゼが展開するのは、「ナノテクノロジー転職ナビ」「表面処理転職ナビ」「高周波デバイス転職ナビ」など、専門性の高い特化したナビサイト。2014年だけでも10以上のサイトをオープンさせ、多いときには一度に50のサイトをリリースすることもあるという。
そのうちの1つ「ヒートポンプ転職ナビ」は、ヒートポンプ技術に関する知識や経験を持ったエンジニア求人に特化したサイトだ。
ヒートポンプとは、空気中などから熱を集めて、熱エネルギーに変換する省エネ技術のこと。エアコンや冷蔵庫にも使われており、近年注目を集めている。サイトを見てみると、「技術特性から探す」という項目だけでも、
「潤滑性」「耐摩耗性」「硬度」「耐熱性」「海水腐食防止性」
など専門的な項目が並び、求人検索の細かさに驚かされる。ただし分野はマニアックだが、参加企業は豪華だ。東芝や三菱電機、日立製作所、富士電機といった大手家電メーカーの名前が並ぶ。
年収600万~800万円の比較的好待遇の求人が目立ち、登録者は30代が36.6%で最も多い。ある程度経験を積んだ働き盛りのエンジニアが、キャリアアップを目指して登録しているようだ。
技術特許情報を分析し「将来の成長分野」を見極め
一体どういう経緯で、こうした大量のニッチな転職サイトを運営しているのか。代表の永井歩氏は、「当社のサイトはいずれも成長分野に人材を動かしていくのが目的です」と語る。
同社で技術特許情報を分析するサイトを運営して、今後の成長分野を見極めており、転職サイトもその分野に特化して発展させてきた。今年も米国で「グーグルグラス」が発売されたのを受け、6月に「ウェアラブルデバイス転職ナビ」をリリースした。
現在、家電メーカーが医療分野に進出するなど大企業も新しい事業に取り組んでいるが、国内のメーカー系エンジニアの流動性が低いこともあり、その分野に詳しい人材がどの程度いるか把握しにくい。
専門に特化した転職サイトなら、その分野に精通した優秀な人材をピンポイントで集めることができる。こうした点が、大手メーカーの求人掲載につながっているようだ。
「リチウム電池を専門とする人だけでも100人以上が登録しているので、そうした転職サイトは他にないでしょう」
中には月間登録者がゼロのサイトもあるというが、「ヒートポンプ転職ナビ」同様、多くのサイトに大企業の求人が出ており、例えば「植物工場転職ナビ」には、パナソニックやシャープ、クボタなどの求人があった。
「光デバイス転職ナビ」の登録者数が急増
最近では、青色LEDの発明で中村修二教授らがノーベル賞を受賞したのを受け、2年前にリリースした「光デバイス転職ナビ」の登録者数が急増。「ニッチな分野を他社に先駆けてやる」という効果があらわれた。
現在は「再生医療」に特化した転職ナビを検討しているといい、永井代表は「今後も成長分野の人材流動性を高め、イノベーションを促していきたい」と話していた。
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