2014年12月15日 17:41 弁護士ドットコム
犯行の理由は「刑務所に戻りたいから」――。中学校のガラスを割ったとして、住所不定・無職の男性が11月下旬、器物損壊の疑いで新潟県警に逮捕された。
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報道によると、男性は11月23日夕、新潟市内の中学校の出入り口のガラスなどを石を投げて割ったとされる。奇妙なのは、犯行後に男性が通行人に声をかけ、警察を呼ぶよう頼んだことだ。男性はこの日の午前、中学校の近くにある新潟刑務所を出所したばかりだったという。
動機については「刑務所に戻りたい」と話していたという。このような動機は、罪の重さに影響があるのだろうか。刑事事件にくわしい布施正樹弁護士に聞いた。
「刑務所に戻りたいから犯罪をしたという『動機』は、被害を受ける人のことを考えていない自己中心的な発想と言わざるを得ません。当然、裁判では『不利な事情』として評価されるでしょう」
どれくらい不利になるのだろうか。
「そもそも犯罪というのは、身勝手な動機にもとづくものが大半です。したがって、単に動機が自己中心的だというだけで、格段に不利だというわけではありません。
こうした理由での犯行は、犯人の『更生可能性』を評価する際に重要なポイントになることでしょう。つまり、更生して健全な生活を営める見込みが低く、再び犯罪に走るおそれが少なくないとみなされやすい、ということです。
刑務所に戻りたいという考えは、一般社会の秩序の中で真っ当に暮らしていこうとする意欲が乏しいと捉えられます」
更生しにくい社会にも問題があるのではないか。
「もちろん、本人の側に『更生のために、できるだけの努力をしたが周囲が受け入れてくれず、絶望して刑務所に戻りたいと思うようになった』といった事情でもあれば、話は別でしょう。
しかし、今回のケースでは、犯人は刑務所を出所したその日のうちに、事件を起こしています。これは、一般社会に溶け込んでいくために自ら何らかの努力を払ったとは、ちょっと考えにくいですね」
では、刑の重さはどうなるだろうか。
「更生の可能性が低いので、より長期間の矯正(服役)が必要であると評価されやすくなるでしょう。必然的に量刑も、多少なりとも厳しいものとなることが予想されます」
量刑が厳しくなれば、「刑務所に戻りたい」という本人の希望通りともいえる。だが、はたして、それでいいのだろうか。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
布施 正樹(ふせ・まさき)弁護士
横浜弁護士会所属、同会刑事弁護センター運営委員会委員。刑事弁護・少年事件に特に力を入れて取り組む一方、一般民事事件・家事事件等も手がける。現在、他士業と連携した無料メールマガジンを発行中。(http://www.mag2.com/m/0001640642.html)
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