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フォーミュラE第3戦決勝レポート:ついに勝ったブエミとeダムス。速さで魅せたベルニュ

2014年12月15日 07:10  AUTOSPORT web

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ついに初優勝を手にした、eダムス・ルノーとブエミ
フォーミュラE第3戦プンタ・デル・エステePrix。上空は青空に覆われているが、風が非常に強いコンディションだ。

 予選でポールポジションを獲得したのは、アンドレッティ・オートスポーツのジャン-エリック・ベルニュ。つい先日までF1のトロロッソをドライブしていた経験をいかんなく発揮し、2番手のネルソン・ピケJr.(チャイナ・レーシング)以下を抑える、見事な走りを見せた。なお、このベルニュとニック・ハイドフェルド(ヴェンチュリ)、サルバドール・デュラン(アムリン・アグリ)にファンブーストが与えられた。

 スタート位置はポールポジションのベルニュがアウト側、2番手のピケJr.がイン側。ベルニュはスタート時の蹴り出しでホイールスピンが多く、マシンを寄せていくもピケJr.に先行を許してしまう。後方でもクラッシュはなく、全20台が無事にスタートを切っていった。

 強い風が運んできた砂浜の砂がコース上に多く、マシンは砂埃を上げて疾走していく。2周目にアウディ・アプトのダニエル・アプトがスローダウン。トラブルを抱えているようで、マシンを交換するまで、止まったり、走ったりを繰り返すこととなり、後退していってしまう。

 4周目にはこのレース初めてのクラッシュが発生。開幕戦で3位、第2戦で優勝を果たしていたサム・バード(ヴァージン)が、最初のシケインの縁石に乗り上げジャンプ! コントロールを失い、コンクリートウォールにクラッシュしてしまう。これでバードはリタイア。事故車を回収するため、セーフティカーが出動する。

 レースが再開されるのは7周目から。2番手のベルニュは、ピケJr.を激しく攻める。しかし、第1シケインをアムリン・アグリのアントニオ・フェリックス・ダ・コスタが直進。そのままエスケープゾーンにマシンを止めてしまう。ダ・コスタはこのままリタイア。レースは序盤にして、サバイバルの様相を呈してきた。

 ダ・コスタのマシン撤去のため、ふたたびセーフティカー出動。11周目にレースが再開される。

 13周目の8コーナー、ベルニュがピケJr.を交わしてつい先頭に立つ。ベルニュのペースは非常に速く、先頭に立つと後続を徐々に引き離していく。一方ピケJr.のペースは上がらず、続いてeダムス・ルノーのセバスチャン・ブエミもポジションを狙う。15周目の第1シケインでブエミがインに飛び込むも、ブレーキロック! 両者シケインを曲がりきれず、順位は変わらぬままレースは進んでいく。

 この時点でベルニュは、ピケJr.を3.2秒引き離して独走状態。しかし、ベルニュの電池残量は、早くも10%を切っている。ピケJr.も13%と少ないが、3番手ブエミ22%、4番手ニコラス・プロスト(eダムス・ルノー)18%、5番手ニック・ハイドフェルド(ヴェンチュリ)21%と、後続にはまだまだ余裕がある。

 ベルニュは15周終了時点でピットイン。早々にマシンを乗り換える。このレースは全31周。2回のセーフティカーランがあったにも関わらず、レース距離の半分以下で電池を使い切ってしまったことになり、ベルニュは速いもののエネルギーの使い方に難があるようだ。この間にピケJr.はブエミとプロストに抜かれ、3番手に順位を落とす。

 さらにこのタイミングでまたもアクシデント発生。8番手を走っていたステファン・サラザン(ヴェンチュリ)が、縁石に乗り上げた際に右フロントのサスペンションを壊してクラッシュ。3度目のセーフティカー出動となる。このタイミングで他のマシンもピットインしてマシンを乗り換える。ブルーノ・セナ(マヒンドラ)はサラザンのクラッシュを避ける際に左リヤをウォールにヒットさせて壊していたが、なんとかピットに辿り着き、マシンを交換することができた。

 各車がコースに復帰し、隊列が整う。ここで先頭に立ったのはベンチュリのニック・ハイドフェルド。しかし、エネルギーの最大使用量違反で、ドライブスルーペナルティを課せられてしまう。

 18周目、ハイドフェルド、ブエミ、ベルニュの順でレース再開。ベルニュはセーフティカーラン中でもエネルギー消費量が多く、ペースは抑え気味だ。ハイドフェルドはこの周にピットに入り、ペナルティを消化する。

 20周目にヤルノ・トゥルーリ(トゥルーリ)がジェローム・ダンブロジオ(ドラゴン)を交わして6位にジャンプ。しかし上位とはペースが大きく異なり、大きな差がついていく。

 そしてここから多くのペナルティが課せられていくこととなる。プロストにはハイドフェルド同様エネルギーの使用量違反でドライブスルーペナルティ。ミケーラ・セルッティはピットレーン速度違反、ダンブロジオとハイドフェルドにはピットストップ制限時間違反(車両交換時には、最低64秒ピットレーンに留まらなければならない)で、それぞれドライブスルーペナルティの裁定を言い渡される。

 26周目の順位はブエミ→ベルニュ→ピケJr.→ルーカス・ディ・グラッシ(アウディ・アプト)のトップ4。しかしベルニュの電池残量は、この時点で30%を切っている。それでもベルニュはセクター1で最速タイムを記録し、ブエミを追うことをやめない。

 トゥルーリを先頭とした5位争いも熾烈。トゥルーリ→マシュー・ブラバム(アンドレッティ)→ハイメ・アルグエルスアリ(ヴァージン)→セナの4台が、1.6秒差内の接近戦を繰り広げる。特にブラバムは予選ノータイムで18番手スタートだったドライバー。目覚ましい追い上げである。

 しかしそのブラバムは27周目の11コーナーでミス。リヤを流してコントロールを失い、縁石に乗り上げてそのままクラッシュ。頭を抱え、コース中央付近にマシンを止めてしまい、このレース4度目のセーフティカーが出動。マシンから降りたブラバムはグローブを地面に投げつけて悔しさを露にしたり、頭を抱え込んでコース脇に座り込むなど、かなり落ち込んでいる様子だ。

 レース再開は30周目から。残り2周のスプリントレースだ。もちろん、最大の注目はブエミとベルニュの優勝争い。ファンブーストを残しているベルニュ有利のように思われるが、彼には電池残量の不安もある。

 ブエミの直後にベルニュがつき、リスタート。ベルニュはメインストレートでファンブーストを使い、ブエミに迫る。ブエミは必死に応戦し、第1シケインでブレーキをロック。なんとか踏ん張るもふたつめのシケインを止まりきれずに直進してしまう。なおも諦めないベルニュは8コーナー、9コーナーとブエミを攻めるが……12コーナーを越えたあたりで突如スローダウン。そのままストップしてしまう。まさかのエネルギー切れかと思われたが、チームの発表によればサスペンションのトラブルだったようだ。

 これで楽になったブエミは、そのままチェッカーまで走りきり、フォーミュラE初優勝。大本命と言われた男が、ついに勝利を手にした。2位にはピケJr.、3位にはディ・グラッシが入った。ディ・グラッシは開幕から3戦連続の表彰台である。なお、ファステストラップはダニエル・アプトが記録している。

 このレースで目立ったのは、なんと言ってもF1から転向してきたベルニュの速さだ。トラブルによりストップしてしまったのは残念だったが、それでもフォーミュラE初挑戦にもかかわらずポールポジションを獲得し、終盤までトップを争うなど、“さすが現役F1ドライバー”という強さと速さを存分に見せてくれた。そして、本命候補と言われたブエミ+eダムス・ルノーが、ついにフォーミュラEで初勝利。チームランキングでもトップに立った。

 なお、フォーミュラE次のレースは来年1月10日、アルゼンチンのブエノスアイレスで行われる。

■フォーミュラE第3戦プンタ・デル・エステePrix 決勝結果
1.セバスチャン・ブエミ(eダムス-ルノー):31Laps
2.ネルソン・ピケJr.(チャイナ・レーシング):+0.732
3.ルーカス・ディ・グラッシ(アウディ・アプト):+2.635
4.ヤルノ・トゥルーリ(トゥルーリ):+4.163
5.ハイメ・アルグエルスアリ(ヴァージン):+4.698
6.ブルーノ・セナ(マヒンドラ):+5.197
7.ニコラス・プロスト(eダムス-ルノー):+6.514
8.ジェローム・ダンブロジオ(ドラゴン・レーシング):+7.567
9.オリオール・セルビア(ドラゴン・レーシング):+8.646
10.ニック・ハイドフェルド(ヴェンチュリ):+10.563
11.アントニオ・ガルシア(チャイナ・レーシング):+10.594
12.ミケーラ・セルッティ(トゥルーリ):+19.617
13.カルン・チャンドック(マヒンドラ):+54.175
14.ジャン-エリック・ベルニュ(アンドレッティ):+2Laps
15.ダニエル・アプト(アウディ・アプト):+3Laps
16.サルバドール・デュラン(アムリン・アグリ):+4Laps
リタイア.マシュー・ブラバム(アンドレッティ):+5Laps
リタイア.ステファン・サラザン(ヴェンチュリ):+16Laps
リタイア.アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(アムリン・アグリ):+25Laps
リタイア.サム・バード(ヴァージン):+28Laps