2014年12月14日 11:21 弁護士ドットコム
ゴルフ場を利用する際に負担する「ゴルフ場利用税」をご存じだろうか。ゴルフをする人以外はあまり知られていないかもしれないが、来年度の税制改正をめぐる議論の中で、この税金の見直し案が浮上している。
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麻生太郎財務相は11月上旬の参議院予算委員会で「オリンピックの競技種目に復帰するゴルフに税金がかかるのはいかがなものか」「仮に来年10月に消費税が10%に引き上げるとしたら、(廃止するには)いいタイミングかなと思う」と見直し論を展開した。
ただ、税収減を懸念する地方自治体の反発を踏まえ、政府が廃止見送りの方針を固めたことが12月12日、産経新聞で報じられている。「ゴルフ場利用税」とは、どんな税なのだろうか。廃止すべきなのだろうか。阿久根寛宜税理士に聞いた。
「ゴルフ場利用税は1950年、『娯楽施設利用税』としてパチンコ、麻雀、映画などとともに娯楽施設を利用する人に課される税金としてはじまりました。
その後、消費税が導入される際に、娯楽施設利用税は廃止されましたが、ゴルフ場利用税だけが名称を変えて存続しているのです」
阿久根税理士はこう切り出した。なぜ、ゴルフ場利用税だけがそのまま残ったのだろうか。
「ゴルフをする人はお金持ちで、税を負担する能力がある、と考えられたからです。つまり、ゴルフはほかと比べて『贅沢な娯楽』とされたのです」
では、どこに問題があるのだろうか。
「ゴルフ場利用税には、(1)二重課税(2)税の公平性という2つの問題があります。
まず(1)の二重課税から説明します。現在ゴルフ場を利用する際には、
(a)ゴルフをする場所の提供というサービスを消費することにかかる『消費税』
(b)ゴルフ場という娯楽施設の利用にかかる『ゴルフ場利用税』
という2つの税がかかっています。どちらもゴルフ場を使用する消費行為に税が課せられているわけなので、二重課税になっています。
しかし基本的な税金の考え方として、一つの経済的な行為に対して、二重に税が課せられることはあってはならないとされています。この点において、明らかに問題があります」
(2)税の公平性についてはどうだろうか?
「少し難しいのですが、租税法には『租税公平主義』という基本原則があります。これは、『租税は国民一人ひとりの負担能力に応じて、公平に負担されるべき』というものです。
ここでいう『公平』には、『負担能力の大きい人には、大きく負担をしてもらう』という考え方も含まれています。
当初、娯楽施設利用税がつくられた根拠も、まさにここにありました。つまり、ゴルフ場や映画館を利用するような人はお金持ちなのだから、それ相当の課税をしてもよいというものです」
昔は「ゴルフ=お金持ちの遊び」だったかもしれないが、今はそうでもないだろう。
「いまや、趣味や部活でスポーツとしてゴルフをする人や、接待のためにゴルフをする人など、プレイヤーの環境や所得などは多様化しています。
このような状況で、ゴルフ場を利用する人だけに課税をすることは、筋が通っているとはいえません。
『なぜ、ゴルフだけに課されるのか?』という説明ができないのであれば、租税公平主義に反します」
ただ、地方税であるため、自治体の税収問題にもつながってくる。それでも廃止すべきだろうか。
「たしかに、地方税であるゴルフ場利用税が、地方財源の一部を担っていることはわかりますが、それでも問題がある以上は廃止すべきです。
ゴルフ場利用税が廃止になることで、ゴルフがより身近なスポーツ・娯楽となるのであれば、その地域の活性化にもつながるかもしれません。今の廃止論は見送りになるのかもしれませんが、自治体にはぜひ、ポジティブに受け止めていただきたいと思います」
阿久根税理士はこう述べていた。
【取材協力税理士】
阿久根 寛宜(あくね・ひろのり)税理士
税理士事務所所長。理系出身の税理士でIT、会計に強みをもつ。経営者のよき理解者、会社のペースメーカーとなることをモットーに質の良い税務会計サービスを提供している。ITを用いた経理の合理化、開業支援業務を得意とし、シンプルかつパワフルな会社経営となるよう丁寧で親身な指導を行う。
事務所名 : 阿久根寛宜税理士事務所
事務所URL:http://akune-tax.com/
(弁護士ドットコムニュース)