最近の広報担当の若い女性は、チヤホヤされて勘違いしているだけ。「美人広報」を特集する記者も、広報と女性を馬鹿にしている――。あるIT企業の男性広報担当者がブログに書いた「キラキラ広報批判」が、ネットで話題となっています。
メディアやSNSには、このエントリーに厳しい批判や揶揄が上がっていますが、本来はどうすべきだったのか。サラリーマン・OL事情に詳しい評論家・コラムニストの常見陽平氏に、「あるべき広報の姿」について寄稿してもらいました。
戦略性が足りないのは、残念ながら君の方だった
気づけばネット上で、キラキラ広報担当者論争なるものが起こっていた。ビジネスニュース誠に載った山本恵太という方のエントリー「(戦略のない)キラキラ広報を駆逐したい」がキッカケだ。11日は盟友中川淳一郎氏も参戦し、「キラキラ広報(クソレッテル貼ってるんじゃねぇ、ボケ)がダメだとぉ!?」という記事を書いていた。
元々の山本氏のエントリーがあまりにも粗雑で筋が悪いので、スルーする気満々だった。書籍の締め切りも迫っている。しかし旧知のキャリコネ編集部にお願いされたので、「若き老害」「4代目切込隊長」として簡潔に意見を述べることにしたい。
この山本恵太という人は、痛い。このエントリーが拡散したことでご満悦かもしれないし、ネットPRをわかっているぞと言わんばかりだが、およそ広報担当者とは思えないほどの乱文で、しかも計算して炎上させてやるというわけでもなさそうで、痛い。
中川氏も指摘しているが、社名を名乗ればまだ良かったのだが。地味な仕事をしている広報担当者はいるなどと言うが、これ自体が粗雑な仕事ではないか。猛反省してもらいたい。自己批判をするべきだ。今回の論争というか騒動に関して、私は総括を要求する。Facebookを覗きに言ったら、社名は伏せていた。
ずるいなと思うのは「キラキラ広報」を「戦略性がない」と斬っているが、これこそが痛い広報担当者の証左である。単なる言いっぱなしだ。どこが戦略性がないのと思うのか、具体的に示して欲しい。残念ながら社名を伏せて乱文を書く山本氏こそ、戦略性がないではないか。この記事の拡散は、いったい、次の何につながると言うのだろう?
なぜ社名をあげて「あいつらウザイ」と書かなかったのか
社名を伏せて批判しているが、キラキラ広報がいる渋谷の企業というのは、CA社のことだろうか? 自分自身も、批判の相手も企業名を明かしていないが、これはダメな批判で、他の六本木のIT企業も、渋谷のIT企業も疑われる。サイバーエージェントの広報、キラキラでうざい、となぜはっきり書かないのか。
しかし、この方のFacebookの個人アカウントを探したら、GREEに関するエントリーだらけだ。この方は、GREE社員なのだろうか?GREEの広報窓口に問い合わせメールを送ってみたが、まだ返事はない。もしそうなら、GREEに戦略広報とは何かという取材依頼をしようかとすら思ったが、そうすると、彼の思うツボなのでやめておこう。
広報のあり方は、色々あっていいと思っている。彼の言う「戦略性」なるものも、あった方がいいに決まっているのだが、そもそも広報の役割をちゃんと果たしているのか、という点が問われるのではないだろうか。
広報とは、会社と社会をつなぐ仕事である。会社の取り組みを伝えつつ、メディアなどを通じて社会と対話するのが仕事だ。時には企業が直面したリスクに対応しなければならない。最適なメディア露出を目指しつつ、何か問題があったら対応する。
言ってみれば、片手で記者と握手し、片手で殴りあう。それが広報だ。
同じ職種で馴れ合っている者が多すぎないか
もっとも、山本氏が批判するキラキラ広報なるものを礼賛するわけではない。キラキラ広報担当者でも戦略的広報担当者でも、どちらでもいいのだが、まずは広報の仕事を普通にして欲しいというのが私の考えだ。
記者に何でも思うように書いてもらえると思っている者、なれなれしい者、媚びる者、逆に取材をひたすら断る者、同じ職種同士で慣れ合いになっている者、自分の立場をわきまえない者などが近頃、多すぎないか。
キラキラでも戦略家でもどちらでもいいので、まずは普通に広報の仕事をしろと、世間の広報担当者に言いたい。
10年前、トヨタ、リクルートグループの合弁会社で広報担当者を務め、日経1面、日経ビジネスを始めとするビジネス誌やサンデープロジェクトでのドキュメンタリーの露出などを実現し、中川氏をして「沢山の企業を取材したが、君ほどデキる広報担当者はいない」と言わしめた私からの檄文である。
広報担当者の皆さん、目を覚ましてください! そして、山本恵太さん、今すぐ六本木のTSUTAYAか青山ブックセンターに走り、丸山眞男の『日本の思想』を買いなさい。ソシャゲばっかりやってる場合はありません。
PS.なお、私の広報に関するスタンスは、私のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」の2つのエントリーと、『広報会議』2014年5月号を読んでいただきたい。『広報会議』の内容は、ネットにダイジェスト版も載っている。
■会社と社会をつなぐ誇りと責任 私が広報担当者だったころ(陽平ドットコム)
■片手で握手し、片手で殴りあう仕事を 『広報会議』の取材を受けて考えたこと(同上)
■握手しながら殴り合う。広報は闘いです。(広報会議)
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