2014年12月12日 16:11 弁護士ドットコム
被害は虚偽、無罪の可能性も――!? 強姦罪と強制わいせつ罪で、懲役12年の有罪判決を受け、約3年半にわたって服役していた男性が11月中旬、釈放された。
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報道によると、男性の再審請求を受けて、大阪地検が捜査したところ、判決の決め手となった被害者と目撃者の証言が虚偽だったことが判明したというのだ。男性が事件に関与していないことを示す証拠も発見されたという。
北川健太郎次席検事は記者会見で「無罪とすべき明らかな新証拠に当たると判断した。こういう結果になり遺憾だ」と述べ、えん罪の可能性が高いことを示唆した。
だが、男性は釈放されたものの、無罪になったわけではない。「刑の執行停止」という状態なのだという。これは、法的にどういう状況なのだろうか。男性がはれて「無罪」となるには、何が必要なのだろうか。刑事手続きにくわしい阿野寛之弁護士に聞いた。
「何らかの事情で、有罪判決を受けた人の『無実』が明らかになったとしても、自動的に『無罪』となって、自由の身になるわけではありません。再審、つまり、裁判のやり直しをして、そこで無罪判決を得る必要があるのです」
無罪が明らかならば、すぐに再審をすればいいのではないだろうか。
「再審の手続きには、ある程度の時間がかかります。
まず、『再審開始請求』をする必要があります。請求を受けた裁判所は、この請求の内容を審理して『再審理由がある』と判断したら『再審開始決定』を出します。
これが確定すると、続いて『再審の審判』、つまり、やり直しの裁判が行われ、ここでようやく無罪判決が出るのです」
その間、刑罰はどうなっているのだろうか?
「実は、再審手続の間も、前の有罪判決の効力は生きたままです。
つまり、前の有罪判決が実刑判決だと、『再審の審判で無罪判決が確定するまで、引き続き服役しなければならない』ということになってしまいます」
再審は、かなり重大な証拠が出てこない限り、めったに行われないはずだが・・・。
「そうですね。再審開始決定の多くは、新しい明白な証拠がある場合など、『無罪とすべきことが明らか』だと判断された上で出されます。
明らかに間違った旧判決に基づいて、刑の執行を続けることは、正義に反します。
そこで、裁判所は、再審開始決定をする際、裁量で『刑の執行停止』ができることになっています(刑訴法448条2項)。この執行停止の決定が出れば、無罪が出る前でも釈放となります。
また、裁判所が再審開始の決定をする前でも、検察官が『この事件は無罪だ、前の有罪判決は誤っている』と判断した場合は、検察官の裁量で刑の執行を停止できます(刑訴法442条2項ただし書)」
今回の場合はどちらだろう。
「今回の大阪の事件では、再審開始決定はまだ出ていません。つまり、検察官が自ら『有罪判決は誤りだ』と判断して刑の執行停止をした結果、男性が釈放されたということになりますね」
阿野弁護士は、このように説明していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
阿野 寛之(あの・ひろゆき)弁護士
1975年生。1998年京都大学法学部卒。2000年弁護士登録(福岡県弁護士会)。裁判員裁判・
否認事件等の困難刑事事件を中心に、企業法務案件、各種損害賠償事件(原告・被告問わず)
等もこなす。
弁護士法人大手町法律事務所(北九州市)所属。
https://www.facebook.com/kitakyushu.ohtemachilawoffice
事務所名:弁護士法人大手町法律事務所
事務所URL:http://www.ohtemachi-lawyer.com/