11日、都内でトヨタ・レーシングによる今季WEC世界耐久選手権の活動報告会が行われ、チームの木下美明代表や、村田久武モータースポーツユニット開発部部長が今シーズンを振り返った。
シーズン5勝を挙げ、マニュファクチャラー/ドライバーの両チャンピオンシップを勝ち獲ったトヨタが今季を振り返るべく開催したこの報告会には、トヨタ自動車の嵯峨宏英取締役・専務執行委員、トヨタ・モーターセールス&マーケティングの高橋敬三シニアディレクター、木下代表、そして村田部長の4名が参加した。
シリーズ8戦中5勝、そして全戦で表彰台獲得という戦績を残した今季のTS040ハイブリッド。報告会では、木下代表や村田部長が今季を振り返るとともに、新型車両のTS040ハイブリッドついての解説などを行った。
ただ、シーズンを通して速さを見せ、日本初の世界耐久選手権タイトルを獲得したトヨタだったが、ル・マン24時間では、14時間ほどまでは7号車が優位にレースを進めていたものの、トラブルによりリタイア。序盤にクラッシュして修復に約30分を費やした8号車が最終的には3位を獲得したが、悲願のル・マン制覇はならなかった。
木下代表も「本当に惜しいレース」と改めて悔しさをにじませた。序盤からレースをリードした7号車に関しては、残り10時間を走りきれば優勝できるという状況で、「ペースダウンの指示が出ていた」中でトラブルが発生したのだという。木下代表は、7号車に起きたトラブルについても詳細に語った。
「フロントモーターで使っている電流量が、テレメーターで出なくなったんです。その電流センサーを置いている場所から出火したんですが、それは後からつけろと言われた(電流)センサーで、太い配線を切ってつけていて接触抵抗が起きるので、ひとつには温度センサーをつけていたんです。ただ、今回発熱したのは、(温度センサーをつけていない)反対側のセンサーでした」と木下代表。
「その電流値が出なくなり、『ものすごく加熱しているのではないか』ということで、次にピットへ入った時に手で触って確認し、発熱していたら部品を交換する予定でした。その準備もできていたんです」
ただ、ステファン・サラザンの駆る7号車がピットへ戻ってくるとデータが復帰。そのため、交換作業はせず急きょ通常のピットインに変更し、中嶋一貴にドライバーチェンジをしてピットアウトした。
「そうしたら、2周後にそこから発火したんです。もしサラザンが入ってきた時に(データが)死んだままになっていれば、5分の修理で出て行けました。それが、あの時の真相ですね」
ポールポジションからスタートし、序盤からハイスピードをキープしてレースの半分以上をリードした7号車はトラブル発生時、同じくトラブルフリーで走行を続けていたアウディの2号車R18 e-トロン・クワトロと首位争いを展開。5分程度の作業ならば勝負権を十分にキープしたままコースへ戻れた可能性が高い状況だった。なお、村田部長によると、この問題に関しては夏に徹底的に原因を調査。解決策を夏休み後のテストで投入し、後半戦に備えたのだということだ。
2015年シーズンに向けては、「今年から来年にかけてはレギュレーションの変更はほとんどなく、(開発の)数字はもっと上に行きますから、そのクルマで来季を戦います」と語った木下代表。ダブルタイトル獲得という栄冠を手にしつつ、今年はあと一歩のところで手の届かなかったル・マン制覇という悲願達成を、15年シーズンこそ期待したいところだ。