転職を考えるとき「収入アップ」にこだわると、いい会社や仕事にめぐり合えないという話を聞くことがある。特に日本の大企業の中高年社員は、転職で年収を維持できる人がごく少数とも言われる。
その一方で、「年功序列」で収入を抑えられている若手社員は、年収アップが期待できる分野があるようだ。転職コンサルタントのAさんによると、日本の大手ITベンダーでエンジニアとして働く30歳前後の社員が、外資系IT企業に転職して成功する例が最近増えているという。
年収600万から1000万へ。自社株ボーナスも付与
今年Aさんが転職先を紹介し、収入アップを果たした人のケースを聞いてみた。新卒で大手システムインテグレーターに入社したSさんは、31歳。米系ITサービス企業に、インフラエンジニアして転職した。
「この人の場合、年収は600万円から1000万円に上がりました。会社はこの人をかなり気に入ったようで、RSUという株式まで付与するという条件まで付きました」
RSUとはRestricted Stock Unitsの略で、「譲渡制限付き自社株取得権」のこと。ストックオプションのように株式を将来購入する権利ではなく、株式そのものが付与されるのだが、売却時期などに制限が付いている。
株式をもらった段階で財産となるので一種のボーナスといえるが、それをいつ売るかによって財産がより膨らむことも期待できる。それも自社株式なので、自分が頑張れば頑張るほど価値を高めることができる。この点はストックオプションに似ている。
RSUの付与は、外資系企業への転職では珍しくないようだ。大手電機メーカーでシステムエンジニアをしていた31歳のTさんも、米系のネットワーク関連メーカーに転職したところ、年収が560万円から800万円に上がったうえに、やはりRSUを付与された。
SさんとTさんの共通点は、ともに31歳ということ。日本企業は年功序列なので、いくら頑張って働いても、大きく報われるのは中年以降になる。しかし働き盛りが欲しい外資系企業にとっては、この世代はお金を積んでも採用したい大きな戦力である。
成功者は「有名大学を出たエリート層」とは限らない
NTT系の企業に新卒で入社してSEとして働いていた30歳のUさんも、米系コンサルタント会社のシステム部門に転職し、年収が500万円から650万円に上がったという。これら年収アップを実現した人たちは、特に有名大学を出たエリート層ではない。
今年7月に、「年収1000万の外資系SEだけど質問あるか?」というスレッドを2ちゃんねるに立てた30代前半の男性も、MARCHレベルの私大文系学部を卒業。新卒で「中小国内企業」に入って4年、その後「外資ベンチャー」で3年の勤務を経て、「普通の外資」に転職し2年目のネットワークエンジニアだという。
年俸と賞与合わせて、年収1000万円。土日祝は完全に休め、有給休暇も完全取得。家族のための休暇も別にある。労働時間は1日8時間だが、本国との会議が夜中に開かれることも。TOEICは860点。外資はクビになりやすいというが、「切られたら転職すればいいだけだろ、って思ってる」と明かす。
匿名の書き込みだが、業界に精通するAさんによれば「信憑性のある情報」だという。キャリコネの口コミにも、外資系IT企業への転職者の書き込みが見られる。S社に勤務する30代後半のプロジェクトマネジャーは、2014年の年収が1400万円。「普通の日本企業よりはるかに手厚い福利厚生」にも満足げだ。
「健康保険、401kは会社負担。外資系企業には珍しく、退職金の制度もあります」
実際に会社を辞めなくても、若いうちから他社の求人情報を眺めながら、自分の市場価値を確認しておくことは有用だ。「クビになったらあの会社に行ってみよう」と考えながら仕事をすると、精神衛生上よかったりするのではないだろうか。
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