2014年12月10日 18:41 弁護士ドットコム
外交や防衛などにかんする「特定秘密」の漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法が12月10日、施行された。この法律をめぐっては、国民の「知る権利」や「表現の自由」が侵害されるといった批判が強い。
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この日、同法が違憲だとして国を提訴しているジャーナリストらが東京都内でシンポジウムを開いた。その終了後、登壇した宇都宮健児・元日弁連会長に、特定秘密保護法の問題点について、インタビューした。
――今日施行された秘密保護法をどう捉えているか?
「秘密保護法は、外交や防衛だけではなく、テロやスパイ活動なども対象にしており、国民生活そのものが監視される法律になっている。
これまでも、公務員が秘密を漏えいした場合に処罰する法律として、自衛隊法や国家公務員法があった。しかし秘密保護法では、国民が秘密にアクセスする場合に処罰される。自由な取材活動や報道活動ができなくなるおそれがある」
――取材・報道活動にどんな影響があるのか?
「私が一番恐れているのは、戦前の『軍機保護法』(軍事機密を保護するために作られた法律)のようになることだ。この法律によって処罰されたケースはほとんどなかったのだが、社会全体が萎縮(いしゅく)し、政府批判ができなくなった。マスコミが侵略戦争を追認するような方向になってしまった。
やはりマスコミが『こんなことはふざけるな!』と積極的に報道するのが理想だが、それを妨げることを狙っているんじゃないかと思う」
――今後、マスコミが政権を批判しなくなるという状況もあるのか?
「今でもマスコミは政権批判をやらなくなってきている。しかし、マスコミは権力を監視する役目がある。だから、首相と飯食っていたらダメだよ。飯食って話したら、批判の矛先が弱まるから。マスコミは徹底的に政府の闇を暴かないといけない」
――取材や報道をするときにどういうことを気をつけるべきか?
「逮捕や拘束、弾圧をおそれたらダメだと思う。今でもそういう雰囲気に少しなっているが、民主主義は与えられるのではなくて、勝ち取らないといけない。こんなところでビクビクする必要はない。『こわい、こわい』と何も書かなくなることこそが、民主主義社会の死滅につながる」
(弁護士ドットコムニュース)