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キラキラOLは”野菜版オフィスグリコ”で新鮮野菜を食べる? OFFICE DE YASAIでねらう「農業活性」の展望――KOMPEITO・川岸氏に聞く

2014年12月09日 18:40  キャリコネニュース

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小腹が空いたときに買える「置き菓子」として、サラリーマンやOLの支持を集める「オフィスグリコ」。常に在庫を補充してくれるうえ、新商品を知る機会にもなり、企業と利用者双方にとってメリットが大きい独自サービスとして定着しつつある。

これと同じようなしくみを「野菜」に応用し、オフィスにハンディサイズの野菜や果物を届ける――。このサービス「OFFICE DE YASAI(オフィス・デ・ヤサイ)」を展開するのが、東京・渋谷区に本社を置くKOMPEITO(コンペイトウ)社だ。

2014年11月にはマヨネーズ大手・キユーピー社と事業提携を締結し、約5000万円を資金調達した。生産者のチャネル拡大や素材調達、商品開発などで協力するという。このユニークなビジネスはどのように生まれ、どのように成長していくのか。代表取締役の川岸亮造氏に話を聞いた。

→(2/3頁)冷蔵庫は無料レンタル。地元でしか流通しない「ミニマンゴー」も

冷蔵庫は無料レンタル。地元でしか流通しない「ミニマンゴー」も

――「オフィスに野菜を届ける」という発想は、どこから生まれたのでしょうか?

川岸:当社はもともと「農業活性」や「地域活性」を目指して2012年に起業しました。最初は野菜の個人宅配や直接販売などを事業にしていたのですが、農家から野菜を送るための送料は、実は1セット分も5セット分もそれほど変わらないんです。じゃあ「5セット分を消費できるほど人が集まっているところはどこか?」と考え、企業に目をつけました。

当初はオフィスで野菜セットを共同購入してもらい、各自で必要な野菜を持ち帰れるようなサービスをイメージしていたんです。ただ、調査を進めていく中で「オフィスで食べたい」という声をいただいて、起業して1年弱で今のサービスの原型ができました。

――農家から、どのように野菜をオフィスまで届けているのですか?

川岸:配達した野菜をそのまま食べていただくために、生産者が収穫したのち、専用拠点で洗浄・殺菌し、パッキングしています。それを当社のデポに送り、そこから企業に無料でレンタルしている冷蔵庫に週1~2回運びます。運搬は、配送員が電動自転車で運んでいます。提携農家は40ほどで、配送先は東京都を中心に約200拠点。毎週150パックずつ配送しても、すぐに冷蔵庫から野菜がなくなってしまう会社もあります。

料金プランは3つで、オフィスグリコのように個々の商品代を社員が支払う「イージープラン」のほか、会社と社員で代金を分け合う「シェアプラン」や、会社がすべて負担してくれる「ハッピープラン」を採用する会社もあります。

――どんな商品に人気があるのですか?

川岸:きゅうりやミニトマトといった、食べ方のイメージが湧きやすいものですね。価格は1パック100円~200円程度(商品によっては300円)です。「珍しい」と喜ばれたのは、5センチくらいのミニマンゴー。受粉しなかった無核のマンゴーですが、産地(前回提供した時は沖縄が産地でした)でしか売られておらず、甘くて美味しいです。あとは小ナスも、「食べてみると意外と美味しかった」という声を頂いていますね。レンジで温めて「ナス味噌」として食べていただきました。調味料やソースも、冷蔵庫の上に置いていますよ。

最近では、イタリア野菜もラインナップに追加しました。セロリのような「スティッキオ」、ブロッコリーの仲間の「スティックセニョール」など…。珍しい野菜も、食べ方をイメージしてもらえれば試してもらえるので、色々とラインナップを増やせればと思っています。

→(3/3頁)導入が多いのは「ITベンチャー」と「外資系企業」

導入が多いのは「ITベンチャー」と「外資系企業」

――新しいビジネスモデルを確立するまでには、苦労があったと思います。

川岸:最初の営業には苦労しましたね。社長つながりで企業に手紙を書いたり、トマトのかぶりものをしてイベントでミニトマトを無料で配ったり…。そのようなことをしながら、都内の企業を中心に徐々に認知されてきました。

運営面では、夏場の野菜の配送ですね。収穫後はずっと冷温環境に置かなければ、すぐにしおれてしまいます。オフィスに提供する冷蔵庫も、開けっ放しになると商品がぜんぶ痛んでしまうので、採用する冷蔵庫のモデルチェンジも実行しました。

――導入企業にはどのようなところが多いですか?

川岸:今導入頂いているのはITベンチャー企業や外資系企業が多いです。IT企業の場合は、エンジニア向けの福利厚生として導入される企業が多いですね。いまエンジニアは雇用面で売り手市場なので、人材獲得のためのアピールやモチベーション維持に使っていただく企業もあります。実際エンジニアの方は生活が不規則な方も多いので、健康面で喜ばれているという声も聞きます。

外資系企業は、先行投資的に健康に良いことをして病気のリスクを減らそうという考え方が浸透しています。背景には、皆加入の健康保険組合がないという事情があるようですが。あとは、CSA(Community Supported Agriculture:地域コミュニティで農業を支えようという概念)も浸透しています。たとえば米国では「Farmigo(ファーミゴ)」という、オフィスや教会などで20人のメンバーを組めれば、農家から新鮮な野菜を直送するサービスが広がっているそうですよ。

――このしくみは農家にとってもメリットがあるのではないでしょうか。

川岸:OFFICE DE YASAIに参加することで、農家は決まった量を決まった価格で出荷できるようになります。野菜は市場に出すと需給によって価格が上下し、思ったような値段がつかないことも少なくありません。直接販売を考える農家も増えているのですが、販売先を独自に確保するのは難しいんです。また、規格外の小さな野菜で今まで販売できないとされていたものもパックに詰め、オフィスという場で提供することで、農家にとって新たな収益源とすることができます。

それから、買ってくれるお客様の顔がイメージできる点も、生産者のモチベーション向上につながっています。これまでは自分の野菜を誰が食べているか分からなかったけれど、渋谷のインターネット大手の会社に導入されていると知ると、「キラキラ女子たちが食べてくれているなら頑張ろう!」となるんですよね。

農家と企業をつなぎ「農業活性」「地方活性」を

――企業とのルートができると、新たな商品開発も期待されます。

川岸:「OFFICE DE YASAIミール」として一部先行販売していますが、お惣菜や加工品の開発も進めています。秋からは京都の企業と提携し「おばんざい」の販売も始めました。加工品は少し単価が上がってしまうのですが、これを提携農家の野菜で作れれば、新しい販売先になります。

今後もジュースや加工品のみならず、家庭で使える野菜を提供したり、CSR的な視点から農業ツアーや企業農園というような発想も考えられます。当社と農家と導入企業の3者がつながることで、色々な可能性を考えていければと思っています。

――キユーピー社との提携によって、どんな可能性が広がりそうですか。

川岸:キユーピーさんは調味料という強みをお持ちなので、商品のアイデアの幅が広がるのが大きいです。たとえば小さなパッケージのバジルソースにトマトとチーズを加えて「カプレーゼ」にする、といったことがすぐに実現できます。食品管理の知見も充実しているので、新しいアイデアの実現力が大きく違ってくると思います。

また、販路の拡大によって、農家が収穫物の量や価格を確保できるというメリットも期待しています。新たな収益源が生まれれば、農家のモチベーションになりますし、若い世代の参入にもつながります。

今後はOFFICE DE YASAIの導入企業を増やし、収益モデルをしっかりと確立することが目標です。そのためには、会社が野菜・果物代金の全額、もしくは一部を負担して社員の方がより手軽に野菜を摂れるプランの拡大を考えています。収益モデルが確立できれば、提供エリアをもっと広げることも可能になる。そんな好循環を生み出して、当初からの目標である「農業活性」や「地方活性」を実現できればと思っています。

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