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2014年F1・記憶に残る無線セレクション【前半戦】

2014年12月09日 16:30  AUTOSPORT web

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過去にも「Leave Me Alone(ほっといてくれ)」など数々の名言を残すキミ・ライコネン。無線では、いつも怒っているように聞こえるが、そういうわけでもないという
ドライバーとチームが無線で交わした会話から、今シーズンを振り返る年末スペシャル企画。まずは開幕戦オーストラリアGP~第11戦ハンガリーGPからセレクトして、お送りします。

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【第1戦オーストラリア・LAP1】セバスチャン・ベッテル→「Still no "K"! なんとかしてくれよ!」

 今季チームメイトのダニエル・リカルドに大敗を喫した印象の強いセバスチャン・ベッテル。だが、彼の身にパワーユニット関連のトラブルが降りかかり、幾度となくチャンスを奪われたことも事実だ。開幕戦オーストラリアGPでもスタート直後にMGU-Kのトラブルでリタイアを余儀なくされ、モナコやオーストリアでも同様のトラブルに見舞われている。スタート直前に「エンジンはGOOD、ギヤボックスはGOOD、バッテリーはGOOD」と状況報告を受けるのだが、それでも数ラップで壊れる。もしレッドブルがメルセデス製パワーユニットを積んでいたなら、余裕でチャンピオンを獲れていただろうと言われるほど、今季ルノー勢は悲惨だった。

【第2戦マレーシア・LAP51】フェリペ・マッサ←「バルテリは君より速い。彼をホールドアップするな」

 2010年ドイツGPの悲劇再び──? と思わせる無線がフェリペ・マッサに飛んだ。「バルテリのほうがフレッシュなタイヤだ。彼を抑え込むな、前に行かせろ」と、後ろから来るチームメイトのバルテリ・ボッタスに譲れとの指示。だが、マッサは頑として譲らなかった。実はレース序盤にボッタスが抜きかかり、「何をやってるんだ!?」とマッサが激高、ボッタスはチームに「アタックするな」と言われて「僕のほうが速いのに……」と嘆く伏線があった。レース後はチーム内抗争勃発かとメディアが色めきたったが、「僕は正しいことをした!」と主張するマッサに対し、ボッタスが大人すぎて、さほど盛り上がらず期待外れに終わる。

【第3戦バーレーン・LAP1】キミ・ライコネン→「アイツが、またやりやがった!」

 バーレーンGPスタート直後、ケビン・マグヌッセンに接触されてキミ・ライコネンがキレた。それもそのはず、マレーシアGPでも同じように1~2コーナーの交錯で接触してタイヤをパンクさせられていたのだ。ちなみに、ライコネンの無線は常に怒ってわめいているように聞こえるが、「そういうしゃべりかたなだけで、別に怒っているわけじゃない」とのことだ。

【第3戦バーレーン・LAP47】ニコ・ロズベルグ←「パディ(ロウ)だ。あと約10周、2台ともクルマを持ち帰ってくれ」

 メルセデス同士の激しいバトルは、ここから始まった。セーフティカーが明けたところからフィニッシュまでのスプリントレースで、ルイス・ハミルトンとロズベルグの2台は何度もサイドバイサイドのバトルを演じ、チーム首脳陣をヒヤヒヤさせた。ロズベルグは、ロウからの指示に「OK!」と答えたが、全然OKではなかった。まだ、この時は接触もなく、レース直後にじゃれあう余裕もあった。しかし、ロズベルグもハミルトンもパワーユニットの設定を切り替える「ストラット」モードを勝手に操作してパワーを向上させていたことが問題になり、以降はチームから指示されたストラットモードしか使ってはいけないというチーム内規則ができた。

【第4戦 中国・LAP24】セバスチャン・ベッテル→「なんで譲らなきゃいけないんだ?」

 今季はレッドブルでも幾度となくチームメイト間のバトルが見られた。ベッテルのほうが、まずい戦略を採っていることが多く、ダニエル・リカルドを先行させるよう指示されることが続く。疑問を呈したベッテルに対して、エンジニアのギヨーム・ロケリンは「リカルドのほうが後でピットストップした。彼は2ストップ作戦だ」と伝えるも、ベッテルは「そんなの、TOUGH LUCK(身から出た錆)でしょ?」と一蹴。王者としてのプライドを垣間見せたが、最後はチームの利益を考えてリカルドに先を譲った──。

【第5戦スペイン・LAP34】小林可夢偉→「ブレーキを失った! 何かが壊れたからピットインする!」

 ストレートエンドでブレーキディスクが割れてコースオフ、恐怖を味わった小林可夢偉。ケータハムは、この頃から予算が枯渇しており、ブレーキディスクも十分に用意できないような状態だった。そのため予選・決勝に新品を投入できなかったり、本来使うはずのブレンボとは異なるメーカーのディスクを使用することがあったりと、こうしたトラブルが後を絶たなかった。終盤戦の悲惨な状況の予兆は、この時すでにあったのだ。

【第7戦カナダ・LAP37】ルイス・ハミルトン→「パワーを失った!」

 メルセデスの牙城、ついに崩れる。全開率の高いモントリオールでMGU-Kが壊れ、ERSが機能しなくなった。ハミルトンはそれが原因でリヤブレーキがオーバーヒートしてリタイア。ロズベルグも「まだ何も戻ってないよ!」とチームに対策を懇願する。「チームメイト(ハミルトン)も同じトラブルを抱えている。解決するため調査中だ」「ブレーキを労れ。完走することが第一だ」と指示され、ロズベルグはリヤブレーキに気をつけながら、なんとかERSなしで走り続ける。とうとうリカルドに抜かれて、ここでメルセデスの連勝記録がストップ。最強集団にシーズン初の黒星が付いた。

【第9戦イギリス・FP1】スージー・ウォルフ→「トラブル、トラブル! ゼロ・オイルプレッシャー!」

 女性ドライバーとしては1992年のジョバンナ・アマティ以来のF1公式セッション参加となったウォルフだが、FP1を走り始めて、たったの4周でストップしてしまった。もうマイレージがあまり残っていないパワーユニットを使用しての走行だったのだが、チームの予想以上に早く寿命が尽きてしまった。ウォルフは次のドイツGPでもFP1に登場、またしても走行開始直後に「ドライブを失った。ダッシュにはXXXと表示されているわ」と報告する事態となった。だが、「1速のまま戻る」とピットまで帰り着き、その後22周を走行。ベストタイムはフェリペ・マッサのコンマ2秒落ちを記録し、上々の評価を得た。

【第11戦ハンガリー・LAP12】ジェンソン・バトン→「雨が降るんじゃなかったの?」

 スタート直前に雨が降り、ちょい濡れの“ダンプ”状態でレースが始まった。どんどん乾いていく路面に、各車続々とドライタイヤに換えるが、マクラーレンだけは雨が降ってくると読んでジェンソン・バトンにインターミディエイトタイヤを履かせた。その直後、エンジニアから「ドライタイヤは必要?」と聞かれて、バトンがカチンときた。「ハッ!? レーダー上に雨があるんじゃなかったの? だからインターを履かせたんだろう?」。バトンの強い言葉に、エンジニアは「レーダー上に雨はある。OK、ステイアウトだ」と返したものの、数周後に耐えきれずピットインして結局ドライタイヤへ交換。今季のマクラーレンはクルマの不出来だけでなく、戦略上の迷いやミスも少なくなかった。第17戦アメリカGPで、一度はピットに呼ばれたのにケビン・マグヌッセンを優先するためにステイアウトを命じられ、再び伝えられたピットインの指示に対して「本当に? 今度は本当なんだろうね?」とバトンが聞き返した裏には、このような経緯があったからだ。

(米家峰起)