トップへ

「秘密保護法の即時廃止求める」施行目前、法律家8団体が共同声明(全文)

2014年12月09日 12:31  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

特定秘密保護法の施行が2日後に迫った12月8日、自由法曹団や青年法律家協会弁護士学者合同部会など、法律家で構成される8団体が、同法の即時廃止を求める共同声明を発表した。


【関連記事:「僕が第一号逮捕者になっていい」秘密保護法訴訟を傍聴した山本太郎参院議員に聞く】



声明では、特定秘密保護法の「制定過程自体が、国民主権・民主主義の根本に反する暴挙」であり、「多くの国民がプライバシー侵害、思想・信条による差別といった重大な人権侵害の危険にさらされることになる」と厳しく批判。「平和主義に反し、基本的人権を踏みにじり、そして民主主義・国民主権を有名無実化させる危険性を有したまま、今、施行されようとしている」と危機感を表明した。



声明文の全文は以下の通り。



●秘密保護法の施行に反対し、同法の廃止を強く求める法律家8団体共同声明


多くの国民の反対・懸念の声を無視して昨年12月6日、自民党、公明党による強行採決により成立した「秘密保護法」が、本年12月10日に施行されようとしている。



私たち法律家8団体は、憲法の基本原理である平和主義、基本的人権の尊重および国民主権に反する同法の施行に断固反対し、同法の即時廃止を強く求めるものである。



1.民主主義を踏みにじる異常な制定経過



同法は、昨年9月3日に法案概要が公表され、2週間という不当に短い期間を定めて行われたパブリックコメントでは、約9万の意見のうち8割近くが法案に反対する意見であり、各種の世論調査においても、過半数の国民が反対し、8割の国民が慎重審議を求めていた。また、多数の自治体が反対の決議を挙げ、日弁連をはじめとする法曹界はもとより、ジャーナリズム、ノーべル賞受賞者をはじめとする科学者、学者、研究者、作家などの言論界、演劇人など、あらゆる国民の各層各分野から反対の声が上がり、国内のみならず国連人権理事会の特別報告者からの指摘や国際ペンクブ会長声明をはじめとする国際団体等から、国際的基準(ツワネ原則)からも大きく逸脱した同法案に対する深刻な憂慮の声が寄せられた。法案が国会に提出されるや反対の声は全国各地・各分野に広がり、法案に反対する市民が国会を包囲する行動が連日のように繰り広げられた。



安倍政権は、これらの圧倒的な民意を無視して、同法の制定を短期間の審議により強行したのであり、同法の制定過程自体が、国民主権・民主主義の根本に反する暴挙であったといえる。



2.秘密保護法の危険性



同法の本質は、同じく昨年の臨時国会で成立した日本版NSC設置法、本年7月1日に行われた集団的自衛権の行使容認を含む閣議決定と一体となって、集団的自衛権の行使、自衛隊による武力行使・戦争遂行を可能とする軍事立法であり、憲法9条に対する立法改憲・解釈改憲を狙うものにほかならず、この先の明文改憲に道を開くもので、憲法の平和主義の原則と相容れないことは明らかである。



同時に、同法は、政府にとって不都合な国民の言論活動を、警察権力により封じることを目的とする治安立法の性格を併せ持ち、国民の知る権利、表現の自由、プライバシー権など基本的人権を侵害するものである。



すなわち、行政機関の「長」の一存で「秘密」の指定や提供ができる同法は、行政による情報の独占と情報操作を可能とし、秘密の提供は、国会、裁判所を含めて大きく制約され、国民は何が「秘密」に指定されたかを知り得ないまま、「秘密」の漏洩行為等々が広範に刑事罰の対象とされる。これにより、取材・報道の自由、国民の知る権利その他一切の表現の自由は、警察による取り締まりと処罰を恐れて大きく制約され、国民主権の原理を支える基盤は完全に切り崩されることになる。



また、適性評価制度は、行政機関や警察が、秘密を取り扱わせようとする者の、活動歴、信用状態、精神疾患に関する事項等の極めて高度なプライバシー情報について調査・監視を行い、選別を可能とする制度である。同制度は、公務員だけでなく、秘密を扱う民間企業等の労働者も対象となり、多くの国民がプライバシー侵害、思想・信条による差別といった重大な人権侵害の危険にさらされることになる。



3.施行令及び運用基準は、秘密保護法の危険性を何ら払拭するものではないこと



本年10月14日に閣議決定された秘密保護法施行令および運用基準は、これら秘密保護法の持つ危険性を何ら払拭するものではなく、かえってその危険性を現実化させる内容であった。



すなわち、施行令第3条は、秘密の指定機関を何ら限定していない。施行令第12条は、「漏えいを防止するため他に適当な手段がないと認められる場合における焼却、破砕その他の方法による特定秘密文書等の廃棄」が行なえることを定めており、国民の知らぬ間に「秘密」が闇られる危険はむしろいっそう高まった。



運用基準では、適性評価の「評価対象者の思想信条並びに適法な政治活動及び労働組合の活動について調査することは厳に慎み」などとしているが、不当な調査・監視を防ぐための具体的な制度は、なんら盛り込まれず、また、内閣保全監視委員会および内閣府独立公文書管理監は、内閣からの独立性はなく、国民の批判をかわすためだけに設置された「第三者的機関」の粗末な実態が端的に表れている。



加えて、運用基準には、国民の大きな懸念である漏えい罪、取得罪等の罰則規定の謙抑的な運用について、具体的な言及が全くなく、人権侵害や悪用の危険性は何ら払拭されていない。



4.結語



以上のとおり、民意を無視して制定が強行された秘密保護法は、憲法の基本原理である平和主義に反し、基本的人権を踏みにじり、そして民主主義・国民主権を有名無実化させる危険性を有したまま、今、施行されようとしている。



法律家7団体は、これまでも3回にわたり、秘密保護法の廃案・廃止を求める共同声明を公表してきたが、法律の施行期限が目前に迫った今、新たに秘密保護法対策弁護団も加わり法律家8団体として、同法の施行に断固として反対するとともに、同法の即時廃止を強く求めるものである。



以上



2014年12月8日



社会文化法律センター 代表理事 宮里 邦雄


自由法曹団団長 荒井 新二


青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 原 和良


日本国際法律家協会 会長 大熊 政一


日本反核法律家協会 会長 佐々木 猛也


日本民主法律家協会 理事長 森 英樹


日本労働弁護団 会長 鵜飼 良昭


秘密保護法対策弁護団 共同代表 海渡 雄一ほか


(弁護士ドットコムニュース)