毎日規則正しい生活を送ることは健康を維持する上で大切ですが、携わる職種によってはどうしても不規則にならざるを得ません。同じ8時間勤務であっても、シフト制の仕事は健康リスクが高まることをもっと認識する必要があるようです。
英ガーディアン紙のウェブサイトは2014年7月25日付の記事で、「シフト労働者は糖尿病になるリスクが高い」という研究結果を報じています。医者や警察官、消防士などのシフト労働者は、他の労働者と比べて2型糖尿病になる確率が9%高いというのです。
「不健康な生活習慣」に重要な影響か
この研究は「職業と環境医学」誌に発表されたもの。糖尿病リスクはシフト労働で働く男性に最も高く、中でもローテーション制で毎日違った時間に働くシフト労働者は、固定制のシフト労働者より42%も高いリスクを持っているそうです。
これまでの研究で、シフト労働は消化器系疾患やがん、心臓病など健康に関するさまざまな問題に関連付けられてきましたが、今回の研究は糖尿病に結び付けた初めてのものです。
ただし、ケンブリッジ大学医学研究審議会疫学ユニットのディレクター、ニック・ウェアハム教授は、この新しい分析を有用とはするものの、糖尿病がシフト労働による食欲増進や体重の増加など他の原因で説明される可能性も捨てきれないとコメントしています。
英国で診断されている糖尿病患者は約2.9万人。うちの9割が2型糖尿病と言われています。2型糖尿病のリスクを減らす最善の方法は、定期的な運動とバランスの取れた食事で、健康的な体重を維持することだそうです。
シフト勤務がもたらす健康リスクの研究結果は、女性に対しても出ています。2013年7月1日付の同紙サイトに掲載されたカナダの研究結果は、看護婦や医療従事者、コールセンター勤務者など長期にわたって夜間労働を続ける女性に、乳がんの発生リスクが高いと指摘しています。30年以上夜間勤務を続けた人の発病率は、通常の女性の2倍以上だそうです。
ただし専門家たちは、これもシフト労働が乳がんの危険因子であると言い切れるわけではなく、女性たちにパニックに陥らないよう促しています。シフト勤務は不健康な生活習慣につながり、それ自体が乳がんを多発させているのかもしれないからです。すべての女性に定期的な運動と健康的な体重の維持、アルコール摂取の減量を推奨しています。
認知能力の回復には5年以上かかる
11月3日にオンラインで発表されたインドのVISAT(Vijnan科学テクノロジ-研究所)の経年的研究結果は、シフト労働が認知能力に慢性的な影響を与えると述べています。
慢性的な時差ボケのように、シフト勤務は労働者の正常な24時間周期のリズムを崩します。これは潰瘍や循環器疾患、メタボリック症候群、乳がん、繁殖障害など多くの健康問題と結び付けられてきましたが、認知能力に与える長期的な影響はあまり知られていませんでした。
当研究所は32、42、52、62歳の3232人の雇用中と退職した労働者へ、1996年、2001年、2006年の3回にわたって、速度と記憶についての研究を行いました。このうちの1484人がシフト労働体験者で、1635人は未体験者です。
その結果、シフト労働が認知障害に関連づけられることが分かりました。この傾向は10年以上シフト労働に携わった人に強く見られ、シフト労働を離れた後の認知能力の回復には最低5年かかっているそうです。当研究所ではシフト労働が慢性的に認知能力を害することは、個人的な問題だけでなく社会的な安全性の問題でもあると指摘しています。
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