2014年12月07日 09:51 弁護士ドットコム
ネット上にあるコンテンツを使って「ニュース」を作ることは著作権法違反になるのか――。他人の文章や画像・動画を多用した記事をSNSで拡散させる「バイラルメディア」が流行するなか、インターネットと著作権について考える講演会が11月28日、東京都内で開かれた(主催:日本ジャーナリスト教育センター)。著作権の専門家である福井健策弁護士が、「報道」において著作物をどう扱えばいいかについて解説した。
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著作権法では、著作物とは「思想または感情を創作的に表現したもの」(同法1条)とされている。福井弁護士は、著作物として認められるか否かは、「創作性がポイントとなる」と解説する。たとえば、文章中のありふれた表現や事実、データなどは通常、創作性がないので、それだけでは著作物にあたらないという。
また、著作物といってもいろいろあり、映像表現に限ってみても、映画やテレビ番組から、個人が撮影してYouTubeに投稿した動画まで、多岐にわたる。福井弁護士によると、新聞やテレビなどのニュースメディアについては、一定の条件をみたせば、これらの素材を「無許諾」で利用できるという。その条件の一つとして、「時事の事件の報道のため」を挙げた。
「時事の事件を報道するために、その事件を構成したり、事件の過程で見聞きされる著作物を利用することができます(著作権法41条)」
このように福井弁護士は説明する。しかし、実際のメディアの現場では、その素材が「報道のため」に使ってよいものなのか、使ってはいけないものなのか、判断するのは非常に難しい。
講演会の参加者からは「そもそも報道とは何か?」という根本的な質問も出たが、法的には「判例もほとんどなく、学説でもあまり深堀りされていないので、実は大した基準はない」(福井弁護士)という。
福井弁護士は「(利用する著作物が)ニュース性を喪失してしまえば、時事の事件の報道とはいえなくなると思います。1年はおろか数カ月経つと厳しくなるでしょう」との見解を示した。
しかし、ニュース性が失われたかどうかは、判断が難しい「あいまいな領域」だ。結局、ネット上の素材をどう扱うべきなのか。福井弁護士は次のようにアドバイスした。
「著作権法では、白か黒かはっきりわかれるものはめったにありません。完全に白のものしか使いたくないなら、メディアとしてできることは、きわめて限られるでしょう。
もちろん、目の前の法的リスクが大きかったらやってはダメですが、必要なのはリスクゼロというフィクションではなく、リスクの大きさを測って、それを超えるメリットがあったときに、リスクをとれるかということです」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
福井 健策(ふくい・けんさく)弁護士
骨董通り法律事務所 代表パートナー
弁護士・ニューヨーク州弁護士。日本大学芸術学部 客員教授。thinkC世話人。「本の未来基金」ほか理事。「著作権とは何か」「著作権の世紀」(集英社新書)「誰が『知』を独占するのか」(集英社新書)、「ネットの自由vs.著作権契約の教科書」(光文社文春新書)ほか知的財産権・コンテンツビジネスに関する著書多数。
Twitter: @fukuikensaku
事務所名:骨董通り法律事務所
事務所URL:http://www.kottolaw.com