2014年12月06日 13:02 弁護士ドットコム
2013年の労働者の「有給休暇」の取得率が48.8%だったことが分かった。厚生労働省が11月中旬に公表した「就労条件総合調査」の結果だが、ここ5年の有休取得率はいずれも50%を切っている。
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政府は2020年までに有休取得率を70%にすることを目標にかかげている。だが、調査結果によると、この目標を超えた業種は「電気・ガス・熱供給・水道業」のみで、70.6%だった。ツイッターでは「有休の買い取りを義務化すべき」「消化率が低い企業には罰則を。遵守している企業には優遇を」といった意見も出ている。
有給休暇の取得をうながすために、どんな対策が考えられるだろうか。労働問題にくわしい古金千明弁護士に聞いた。
「有給休暇の取得率は、過去20年近くにわたって50%前後で推移しており、ほとんど横ばいの状態です。
他方、海外との比較でいうと、『エクスペディアジャパン』の調査(http://www.expedia.co.jp/p/corporate/holiday-deprivation2013)によれば、日本の有休取得率は、調査対象となった24カ国中、最下位となっています。最下位は6年連続です」
海外と比較しても、有休取得率は低いわけだ。こうした現状を変えるには、やはり国の後押しが必要ではないか?
「有給休暇の取得率を上げるための試みは、これまでなされてこなかったわけではありません。
たとえば、1987年 の労働基準法の改正で『有給休暇の計画的付与制度』が導入されましたし、有給休暇の取得促進運動や成功事例の紹介など、行政による啓発活動も行われてきました。
ただ、取得率を抜本的に向上させることはできていません」
今のところ、国の施策は上手く機能していないようだ。では、どうすればよいのだろうか。
「荒療治ではありますが、厚生労働省の分科会で議論されているように、一定日数の有給休暇を労働者に取得させることを、法律で使用者に義務づける対策がありえます。
しかし、使用者に義務を課すことになった場合でも、義務違反があったからといって、使用者に直ちに刑罰を課すというのは、行き過ぎであると思われます」
取得率を向上させるためには、刑罰などの厳しい態度で臨んだほうが効果があるように思えるが・・・。
「有給の取得率が上がらない背景には、『他の人に迷惑がかかる』『有給中に業務を引き継ぐ人がいない』といった、職場の構造的な問題があるといわれています。
使用者に刑罰を課しても、これらの問題が直ちに解決するとは考えにくいでしょう。
それよりも、使用者への『勧告』などの行政指導によって自発的な対応を促したり、『勧告』で是正されないときに『改善命令』などの行政処分をおこなったり、それでも是正されない場合は『公表措置』を講じたりする。こうした段階的な対応が望ましいと考えます」
「さらに、制裁的措置だけでなく、有給休暇の取得率が高い企業であればあるほど人材を集めやすくなるといった『インセンティブ』の導入も検討すべきと思います。
たとえば、求人の際に有給休暇の取得率の情報開示を義務づけたり、有給取得率が高い企業については『ホワイト企業』であると表彰する等の対応です」
古金弁護士は「企業は、経済合理性で動いています。有給休暇の取得率を上げることにより、経済合理性が上がるような仕組みを導入することができれば、取得率を向上させる効果が期待できると考えられます」と指摘していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
古金 千明(ふるがね・ちあき)弁護士
天水綜合法律事務所・代表弁護士。IPOを目指すベンチャー企業上場企業に対するリーガルサービスを提供している。取扱分野は、企業法務、労働問題、M&A、倒産・事業再生、会社の支配権争い。
事務所名:天水綜合法律事務所