2014年11月30日 10:31 弁護士ドットコム
昨年の日本一から一転、今シーズンは最下位に転落したプロ野球・楽天イーグルス。覇権奪回を目指して新リーダーに就任した「デーブ」こと、大久保博元監督の「スパルタ改革」が話題になっている。
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デイリースポーツによると、大久保監督は来シーズン中の「完全オフ撤廃」を検討しているという。プロ野球では通常、試合のない月曜日などは完全オフになることがあるが、大久保監督は完全オフをなくして、最低でも球場でケアなどを行わせるのだという。
この報道に対してネットでは、「どこのブラック企業ですか?」「選手がかわいそう」など、「完全オフ撤廃」という改革案に疑問を投げかける声が噴出した。プロ野球選手と一般の会社員を同一に扱うことはできないかもしれないが、「シーズン中は完全オフなし」という扱いは法的に問題ないのだろうか。横溝昇弁護士に聞いた。
「プロ野球選手は、労働組合法上の『労働者』に該当するとされています。
実際、『労働組合日本プロ野球選手会』という労働組合がありますので、労働問題が起きた場合には、労働組合が球団などと交渉することが考えられます」
労働者なら、一般の会社員のように、休みももらえて当然なのではないだろうか?
「そこは難しいところです。休日などの基準を定めているのは『労働基準法』ですが、2つの法律は『労働者』の定義が異なるのです。
労働組合法では『職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう』と定義されています。
一方で、労働基準法は『職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者』と定めています」
労働基準法のほうには、事業または事務所に「使用される」という条件がついているわけだ。
すると、プロ野球選手は、労働基準法上の労働者ではないのだろうか?
「プロ野球選手が『労働基準法上の労働者』に該当するかについては、議論があるところです。
しかし、(1)バット等の用具を自らが用意することとなっていること、(2)毎年契約更改交渉を行っていること、(3)報酬が高額であることなどから、『労働者に該当しない』という考え方が一般的です」
プロ野球選手が「労働者」でないなら、「休日なし」でも問題ない?
「労働基準法では、使用者が労働者に対して、少なくとも『毎週1日の休日』か、『4週間を通じて4日以上の休日』を与えなければならないと定めています。
しかし、そもそもプロ野球選手が『労働基準法上の労働者』でないのであれば、労働基準法上の休日に関する規程の適用はありません。
また、プロ野球選手と球団が締結する統一契約書には、休日に関する条項がありません。
したがって、個別に休日に関する契約を結んでいない限り、休日が与えられなくても法的には問題ないといえます」
横溝弁護士はこのように指摘していた。労働組合法では「労働者」なのに、労働基準法では「労働者」にあたらない・・・。なんともややこしい話だが、野球ファンとしては、選手が元気に活躍してくれることを祈るばかりだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
横溝 昇(よこみぞ・のぼる)弁護士
弁護士法人リバーシティ法律事務所 代表社員
千葉県弁護士会、千葉大学大学院専門法務研究科非常勤講師
著書「図解入門ビジネス最新著作権の基本と仕組みがよ~くわかる本」など
事務所名:弁護士法人リバーシティ法律事務所
事務所URL:http://www.rclo.jp/