2014年11月29日 12:21 弁護士ドットコム
自ら学習することができたり、海外の遠隔地から操作できたりするロボットが社会に入り込んできた場合、どのような法的問題が生じうるのか——。ロボットと法律の問題を考えるシンポジウム「ロボット法 202X年のロボットと社会制度」が11月22日、東京都内で開かれた。慶應義塾大学SFC・オープンリサーチフォーラムのセッションとして、議論がおこなわれた。
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シンポジウムには、ロボットや法律の研究者らが登壇。ロボット工学やバーチャルリアリティを専門にする稲見昌彦・慶大教授は「今の労働は肉体が拘束されているが、テレイグジスタンス(遠隔地にあるものを近くに感じながら操作)によって社会が変わる。離れた国から3交代制で働くことができるかもしれない」と語った。
ロボットの操作について、「複数の人が文楽人形のように1つのロボットを操ることになると、魂と肉体の関係が、1対1から、1対多、多対多に変わるかもしれない」と見通しを示した。
同じくロボット工学の専門家である舘暲(たち・すすむ)慶大教授は、制度的な問題として「テレイグジスタンスの場合、ロボットは日本にあるが、操作するのは海外にいる人というケースもある。今は許されていることだが、そのロボットを操作することは『入国』にあたらないのだろうか」と問題提起した。
また、ロボットが事故を起こした場合の法的責任を考える参考例として「自動運転車」を挙げ、「自動車自体の問題であれば製造物責任の問題になるし、道路がおかしいのであれば道路管理の問題、操縦の間違いであれば操縦者の問題になる、自動運転車を通じて、ロボットの問題を考えることができる」と語った。
ロボット研究者側の意見に対し、赤坂亮太・慶大非常勤講師は法学研究者の立場から、人間とロボットの「境界線」をめぐる法的課題について、次のように指摘した。
「身体的なものをロボットが模倣する方向で動いていると思うが、はたして身体になりうるのか。たとえば憲法18条では、身体について、奴隷的な拘束は認められていないが、テレイグジスタンスが高度に発達して、ロボットが拘束された場合は身体性を犯されたことになるのかという疑問がある」
また、ロボット法政策研究者でキャンペナーの工藤郁子氏は「製造物責任は『無過失責任』で、ミスがなくても製造者側に責任を負わせるようになっている。しかし、無過失責任を採用する場合、ユーザーにとってメリットはあるが、メーカーにとって重い負担になる」とした上で、「ロボット自体が自分でユーザーとのインタラクションを経て学習すると、もしかしたら技術者が把握している範囲を超えて活動するかもしれない。そのまま製造物責任を導入していいかという問題があるだろう」と語った。
ロボットと法律をめぐっては、最近も海外でドローン(無人飛行機)に関する制度的な議論が起きており、今後、技術的な進化とともに、さまざまな社会的問題が生じる可能性がある。赤坂氏や工藤氏らは今後、「ロボット法学会」の設立に向けて準備を進めていくという。
(弁護士ドットコムニュース)