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日本の働き方はもっと「バージョンアップ」できる――ヤフー宮坂社長が掲げる「労働観」

2014年11月28日 16:40  キャリコネニュース

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月600億超の閲覧数を誇る日本最大のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」。1995年に米スタンフォード大学の学生2人が始めたベンチャー企業に、ソフトバンクの孫正義氏がいち早く目をつけて出資。翌年には日本法人のサービスを開始した。

そんな会社が広告収入を軸に、いまや年商3800億円を超えるまでに成長している。2014年11月27日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)には、2年半前ヤフーのトップに44歳という若さで就任した宮坂学氏(47)が登場した。

社員が才能と情熱を発揮できる舞台を作りたい

宮坂氏はヤフージャパン創業の翌年に入社し、会社に泊まり込んで仕事をする常連だったという。急成長を遂げた2000年には株価が1億円を突破し、社員も15年で百倍以上に膨れ上がった。

しかし2011年、ソフトバンクグループのビジョンを発表する場で、執行役員の村上臣氏が「このままではヤフーに未来はない」と危機感を表明。数か月後の2012年3月、孫正義氏は社長交代を決め、現在の宮坂氏を大抜擢した。

宮坂氏が打ち出したキーワードは「爆速」。現場に権限を委譲し、斬新なアイデアを次々と形にしていった。ネットショッピングをはじめとする様々なサービスを無料化。アスクル、ブックオフなど他業種との大型提携を含む攻める経営で、2年連続2ケタ成長へと導いた。

村上龍が、かつて組織が巨大化し保守的に傾いたと指摘された点について尋ねると、宮坂氏は「何のための大企業か」について熱く語った。

「やはり1人や10人ではできないことがあり、そのためにやっている。大きな会社にしかできない問題が世の中にはたくさんあり、それを解くために5千人や1万人が集まっている。『情報技術で大きな問題を解決する』ために、わざわざ集まっている」

村上龍が「その人たちの能力を何パーセント引き出せるか」と問うと、宮坂氏は「待遇、福利厚生、オフィスがきれいなど色々あるが、結局、社員が一番自分の才能と情熱を発揮できる舞台を作りたいと思っている」と答えた。

「時間」と「場所」から解放しながら成長を目指す

かつては会社に寝泊まりするモーレツ社員だった宮坂氏は、今ではどんな働き方をしているのか。「さすがに(泊まりは)あまりしないし、社員にもそこは強要しない」と答えながら、働き方に関する自身の考え方を語った。

「ヤフーを成長させたいという思いと、会社の社長として『働き方そのものを変えてみたい』という思いがある。大げさに言うと、日本の働き方はもっとバージョンアップできる。全員に同じように『モーレツに働け』というのは嫌だなと思っている」

理想の働き方は「場所と時間から自由になること」だという。なぜ会社には、毎日満員電車に乗って行く必要があるのか、なぜ9時からスタートするのか、という疑問を抱いており、目指すところをこう明かす。

「僕らのやっている仕事は『考えること』なので、家でもできる。『時計から解き放つ』『場所から解き放つ』という2つを提唱して、それでもちゃんと成長するということを両立してみたい」

その言葉どおり、ヤフーには全社員が月2回、会社以外のどこでも仕事ができる「どこでもオフィス」制度がある。もっとクリエイティブな環境で仕事を、という宮坂氏の方針で始まったものだ。

コーポレートコミニュケーション本部の山田玲恵さんは、この制度を利用して平日に茨城県つくばの山中を颯爽とサイクリングしていた。山の途中で港区のヤフー本社とネットでつながり仕事をする。山田さんは笑顔でこう話す。

「デスクにしがみついていても、なかなかいいアイデアは出てこない。ちょっとリフレッシュした方が絶対アイデアが出る」

「インターネットの力」を信じて笑顔

本社の各フロアに点在するカフェには、社内でプロの手による焼き立てパンが並び、オープンスペースは、仲間内でヨガや昼寝をするなど使い方は自由だ。

本社から徒歩3分の社員食堂は、居酒屋のような雰囲気でちゃぶ台が並ぶ。業績が好調なら社員に食事代を還元する制度で、取材時はこの日を含め4日間が無料だった。「自分たちが頑張れば福利厚生に反映される」と、社員をやる気にさせるしくみだ。

番組では、全国から被災地に3000人を集めた「ツール・ド・東北」の取り組みも紹介。津波被害にあった3県を自転車で巡るイベントで、被災地を訪れる人が激減する地元の人たちの声に応えたものだ。

このイベントに自らも参加した宮坂氏は、開催にはインターネットの力が大きかったことを話し、「まだまだインターネットの力を解き放てる」と嬉しそうに語った。その姿から、宮坂氏が心からインターネットが持つ「問題解決の力」を信じていることと、孫氏が彼を社長に抜擢した理由が分かる気がした。(ライター:okei)