先日、この連載で「面接で思想信条を尋ねてはならない」という制限に苦言を呈したところ、さまざまな意見をいただきました。参考にさせていただき、ガイドラインを守って採用活動を続けながら、今後も実務の現場から異議を唱えていきたいと思います。
さて、私が「尊敬する人」や「愛読書」に関する質問よりもずっとマズイと思っているのが、採用担当者が「手書きの履歴書」を就活生に要求することです。特に多くの企業へ応募する大卒予定者にこれを求めるのは、理不尽といえるのではないでしょうか。(文:河合浩司)
採用担当者は「熱意」を必ずしも重視していない
就活が本格化すると、学生は非常に忙しくなります。中でも時間を取られるのが「履歴書の手書き」です。学校指定の履歴書によってはA3サイズのものもあり、記入欄が多いものもあります。すべて手書きで埋めるのは、なかなかに骨が折れる作業です。
「たかだか履歴書に貴重な時間を費やされるなんて、もったいない。それよりも仕事のことや会社を調べるのに、もっと時間を使えればいいのに…」
と私は思うのですが…。聞くところによると、零細企業が高卒以下のパートタイマーを採用するときなどは、手書きの履歴書から基礎的な学力などを把握する必要があるそうです。
百歩譲ってそれを認めたとしても、同じ方法を大学生に求めるのはどうでしょうか。ところが就活本には、定規をひいて行を揃えたり下書きをして丁寧に書いた後が見られたりすると「熱意が伝わる」などと書いてあります。私が思うに全くの見当違いです。
その理由は、そもそも採用担当者は、入社熱意が高い人だけを歓迎しているわけではないからです。仮に面接の時点で熱意があまり高くなくても、優秀な人が面接に来てくれたら、様々な手を尽くして入社してもらうように動くのが、採用担当の仕事なのですから。
もし、字の上手さが仕事で必要であれば、それは単なる技術ですので、入社後の訓練次第でどうとでもなります。しかし、仕事への適性や考え方・価値観の共有は、訓練ではどうにもならないのです。
おかしな就活コンサルタントに異議を唱えたい
特に大手企業の場合は、学歴や専攻がかなりの比重を占めます。ある採用担当者は「大量の書類をスペックで振り分けるのに、手書きだと見にくい」とまで言っています。
ところが、そんな事情を就活生は理解していません。そこで提案です。採用担当者のみなさん、募集要項に「履歴書は手書きでも印刷でも構いません」、いや「履歴書は印刷で構いません」「手書きの履歴書は不要です」という一文を加えませんか?
実は私の会社でも、そのような断りをしていないため、いまだに手書きの履歴書が来ます。これまでは「手書きでも印刷でも関係ない」というスタンスでいたのですが、今後は「手書きはやめよう」という方向で上司に進言することにします。
そして、就活生に「手書きと印刷がほぼ同じだとしても、手書きにした方が、可能性が少しでも高まる」などと、おかしな入れ知恵をする就活コンサルタントたちに対し、こう訴えたいと思います。
「自分の食い扶持のために学生を不安に陥らせて、誤った情報を伝えるんじゃない!」
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