近年、高い就職率で注目を集めている国際教養大学(秋田市)が、就活の定番になっている黒のリクルートスーツの「非着用の勧め」を宣言して話題を呼んでいる。
背景にあるのは、就職活動の後ろ倒しだ。2016年卒の就活生は、説明会が4月から、面接や筆記試験などの選考が8月から解禁される。同大学キャリア開発センターの三栗谷俊明センター長は、宣言の理由をこう明かす。
「夏の暑い時期に、黒のリクルートスーツは非効率。家が近い東京の学生ならいいけど、遠く秋田から面接に行く学生にとっては大変です」
ストライプでもOK。上着は「必要ない」
これまで同大の学生に内定を出してきた約180の企業のうち、40の企業にはすでに趣旨を説明。自動車や化学、鉄鋼メーカーのほか、航空、運輸など幅広い企業が了承したという。
「堅実なイメージのある銀行も賛同してくれました。そもそもリクルートスーツがいいなんて、誰も思っていなかったんです。面接担当がクールビズなのに、学生がスーツにネクタイだと気まずいという会社もありました」
10月中旬の学内就職ガイダンスで、学生には「リクルートスーツを着なくていい」と伝えた。当たり前と思っていた服装が否定され、戸惑う学生もいたという。三栗谷氏は「自由といっても短パンやサンダルは当然ダメ。常識の範囲内で考えて欲しい」とした上で、こう説明する。
「男子なら、スラックスにシャツでいい。柄はストライプやグレーでもOKです。女子だとスカートやパンツにブラウスでいいのかなとは思います。企業の方も『上着は必要ない』と話していました」
就活生特有のファッションで身を固める必要はなく、基本的に「応募する会社に合わせて、社会人と同じ服装でよい」ということのようだ。
三栗谷氏自身も、以前からリクルートスーツに違和感を持っていた一人だ。
「社会人が、普段黒のスーツを着ることはありません。なので、学生が秋に電車でリクルートスーツを着ていると、『あの子まだ内定がないんだな』と分かってしまう。それが本当に可哀想。就活も普通に入社後も着られるスーツでした方がいい」
フランス人留学生「あれを着るなら日本で働きたくない」
そもそも、黒のリクルートスーツが登場したのは1990年代以降のこと。80年代前半は、男子のスーツは紺。「クリーム色のスカートや、ワンピースを着ていた女性もいた」と三栗谷氏は振り返る。
グローバルな観点からも、日本の「喪服のような」就活スタイルに疑問を投げかける。同大では留学生を積極的に受け入れているが、フランスから来た女子学生が、日本のリクルートスーツを見て、
「あれを着なければいけないのなら、日本で働きたくない」
と話したことがあったという。仙台で行われた就職説明会でも、こんなことがあった。
「中国人の女の子がシャツの襟を立てていたために、マナー講師に『こんなんじゃ受かりません』なんて言われているんですよ。これでは、グローバル化も何もあったものではありません」
同大では今後も学内説明会などを通して、学生と企業双方に「リクルートスーツ非着用の勧め」を働きかけていくという。この取り組みはツイッターでも話題になっており、
「国際教養大のような強気で行ける大学が、このような流れを作ってくれるのはありがたい」「いいぞもっとやれ」「すばらしい動き」
と賛同する声が出ていた。
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