2014年11月27日 19:02 弁護士ドットコム
「1票の格差」が最大4.77倍だった2013年7月の参院選をめぐって起こされた裁判で、最高裁は11月26日、格差が「違憲状態」としつつも、選挙は有効だとする判決を下した。
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一方で、今回の最高裁判決では、かかわった15人の裁判官のうち4人が、選挙制度を「違憲」とする反対意見を書いている。
「違憲状態」と「違憲」――どちらも「憲法に違反している」という意味では同じように思えるが、どういう違いがあるのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。
「今回の裁判では『1票の格差』が問題とされました。これは、各選挙区の定数が、人口比に応じて割り振られていないという問題です。
参院選の4.77倍の格差とは、端的に言えば、北海道の方の1票と、鳥取の方の1票の価値が4倍以上違うということです。今回の判決は、その状態を取り上げて『違憲状態』としました。
このような状態は、憲法が要求している『投票価値の平等』という原則に反するといえるので、裁判所は『違憲状態』にあるとしたのです」
なぜ「違憲」ではないのだろうか?
「裁判所が違憲といったところで、『一票の格差』を是正するのは、法律を作る国会の仕事です。そして、国会で法律等を定めるのには時間がかかります。
そのため、裁判所としてもいきなり『違憲』とはいわず、『違憲状態』という判断を下したのです。『違憲』といえるためには、現在の状態が相当期間継続していることが必要になるのです」
なんだかややこしい話だが、最高裁の考え方によれば、「違憲状態」が長期間続いてようやく正式な「違憲」となるようだ。別の見方をすれば、国会に法改正をする「猶予期間」を与えるために、こうした判決を出しているともいえる。ただ、こうした「1票の格差」は、すでに長い間、問題視されてきたようにも思えるが・・・。
「そうですね、今後の国会の動きしだいによっては『違憲』判決が出るのもそう遠くないのかもしれません」
西口弁護士はこのように指摘していた。
今回の判決に付けられた補足意見は、違憲状態の解消が「国民全体のために優先して取り組むべき喫緊の課題」と指摘している。最高裁の判断がいつまでも同じだと考えていると、政治家たちはいつか「痛い目」をみることになるのかもしれない。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/