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「著作権侵害かは微妙なケース」福井健策弁護士が「ハイスコアガール事件」を読み解く

2014年11月27日 15:51  弁護士ドットコム

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マンガ「ハイスコアガール」の中で他社のキャラクターを無断で使ったとして、マンガ作者と出版会社である「スクウェア・エニックス」の役員・社員15人が11月中旬、著作権法違反の容疑で書類送検された。


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報道によると、作者らは、「ハイスコアガール」の単行本などの166か所で、「SNKプレイモア」社が著作権を持つ、人気格闘ゲーム「キングオブファイターズ」や「サムライスピリッツ」のキャラクターを無断で複製して使った疑いがもたれている。



「ハイスコアガール」のどんな点が問題視されたのか、著作権の問題にくわしい福井健策弁護士に解説してもらった。



●著作権侵害かは微妙なケース


「作品を見た限りでは、著作権侵害かは微妙なケースと感じました」



福井弁護士は事件について、こう感想を述べた。どういった理由で「微妙なケース」と感じたのだろうか。



「こういうケースを検討する際には、先行著作物であるゲームの特定の画面などの『特徴的な表現』が、『ハイスコアガール』で再現されているか、という点がスタートです。



今回の作品では、かなり不鮮明にキャラやロゴが登場しているだけで、再現には至っていない箇所もあります。その場合にはセーフです。



他方、4巻目の一連のプレイ画面など、絵柄も画面展開もかなり再現されているものもあります。その場合には、著作権法の例外規定である『引用』などに該当しないとアウトです」



「ハイスコアガール」では、主人公たちがSNKプレイモア社のゲームをプレイする中で、そのキャラクターが登場するのだが、こういう形で登場させることは「引用」になるのだろうか?



「今回のようないわゆる『二次創作型』『取り込み型』でも引用は成立するか、という点は、最高裁の従来の基準でいえば、厳しそうです」



福井弁護士はこう指摘したうえで、次のようにつけ加える。



●「あうんの呼吸」が働かなかったケース?


「ただ、二次創作は日本文化の華であり、条文はなくても現場の『あうんの呼吸』で成立して来た伝統があります。



世界的にも、ディズニーでさえ『アナと雪の女王』のユーザー動画を事実上黙認して空前のヒットにつなげたように、二次創作的な文化を許容して生かすビジネスモデルや法制度の導入が進む現状があります」



そうした中、なぜ今回のような事件が起こったのだろうか。「ハイスコアガール」を出版していたスクウェア・エニックスは、「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」で知られる日本を代表するゲームメーカーでもある。



「今回は、利用側がスクエニという『プロ中のプロ』だったことや、その初期対応にプレイモアが腹を立てたことで、『あうんの呼吸』が働かなかったケースにも見えます。



そうなると、そもそも二次創作というものは、ネタ元が怒れば吹き飛んでしまう程度の『お目こぼし』なのか、ある範囲までの二次創作は守られるべき『表現の自由』なのか、という本質論が改めて浮上して来るでしょう」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
福井 健策(ふくい・けんさく)弁護士
骨董通り法律事務所 代表パートナー
弁護士・ニューヨーク州弁護士。日本大学芸術学部 客員教授。thinkC世話人。「本の未来基金」ほか理事。「著作権とは何か」「著作権の世紀」(集英社新書)「誰が『知』を独占するのか」(集英社新書)、「ネットの自由vs.著作権契約の教科書」(光文社文春新書)ほか知的財産権・コンテンツビジネスに関する著書多数。
Twitter: @fukuikensaku
事務所名:骨董通り法律事務所
事務所URL:http://www.kottolaw.com