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佐藤公哉&タキ井上GP2放談!(10):あのロシア人に撃墜され、ロシアのチームに乗ります

2014年11月27日 13:01  AUTOSPORT web

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今季GP2を戦った佐藤公哉
2014年シーズンのGP2シリーズにカンポス・レーシングから今季から参戦している佐藤公哉。アブダビで開催された最終ラウンドを終え、合同テストまでの間にくつろぐ公哉のもとに、マネジメントチーム兼レーシングチームであるユーロノバ・レーシングのオーナー、“タキ井上”こと井上隆智穂から、公哉の電話に着信があった。

佐藤公哉(以下公哉):もしもし? 井上さんですか?
井上隆智穂(以下タキ):うぉーい。元気?
公哉:ええ、なんとか元気にしています。スカイプをいただいていたのに、出られなくてすみません。
タキ:ううん、いいよいいよ。僕、アブダビへ行けなかったし、テレビでレースを観たりビンチェ(ユーロノバ社長のビンツェンツォ・ソスピリ)の話を聞いたりしただけだと、細かい部分が分からないでしょ? だから直接、公哉くんと話したかっただけなのよ。いま、大丈夫?
公哉:はい。
タキ:アブダビ大会、まずはお疲れさま!
公哉:お疲れさまでした。
タキ:初日の練習走行は11番手でまずまずだったじゃない?
公哉:ええ。チームメイトの約0.6秒落ちでしたけれど、想定の範囲内でした。走り始めからクルマにグリップを感じていましたし、ミディアムからスーパーソフトにタイヤを履き替えれば、捕まえられるという自信はありました。
タキ:だよな。実際、予選で1セットめのスーパーソフトを履いてタイムアタックしたら、チームメイトよりも速かった。
公哉:0.009秒差でしたけれど、(アルスール)ピックを上回って8番手でした。ピックのエンジニアは慌てていましたよ。
タキ:そりゃあそうだろ。カンポス・レーシングはピック優先のチームだからな。チームは彼とアブダビ前に2015年シーズンの契約を結んでいるし、やはり公哉くんに勝って終わらせたいはずなのよ。
公哉:まあ、他人事はあまり気にしませんけれど……。
タキ:でも、予選で2セットめのスーパーソフトを履いたときは、どうしてタイムアタックしなかったの? ビンチェはエンジニアとのコミュニケーションの問題だと言っていたけれど?
公哉:あのとき僕のエンジニアは、「ほかのドライバーは1回アタックして1回リラックスして、それからもう1回アタックしている」と無線で状況を伝えてきました。続けて「公哉はもう1回リラックスして、それからアタックに入れ」と指示がありました。そのとき僕はウォームアップ中でリラックスして走っていたので、「じゃあ、あと1周リラックスして、その次の周にアタックだな。2周リラックスを入れるのか」と勘違いしました。エンジニアのエミリオの指示を聞き誤りました。
タキ:なるほど……。
公哉:そうしたら次の周にエンジニアから、「なぜアタックしないんだ!」と無線が入り、僕は「え?」と。たしかに予選の残り時間が少なかったので、おかしいとは思っていましたけれど……。ビンチェにあとから聞いたところ、「スペイン人の英語は分かりにくいんだよ。あのときオレも、あれ? 公哉は大丈夫かな? と思った。オレから直接、公哉に無線で確認の指示を出しても良かったんだけど、ここはオレのチームじゃないし」と言っていました。
タキ:事件だな!
公哉:……(汗)。

タキ:まあ、終わったことはしようがない。で、決勝レース1は、またヤツだろ?
公哉:ええ、ロシア人に撃墜されました。後方から横向きになって突っ込んできて、サイドポンツーンは割られるし、フロントウイングの左側は踏まれてなくなるし、サイドプレートは吹き飛ばされるし……。フロントウイングを交換するハメになってピットストップの時間が余計にかかりましたし、クルマの操縦性は悪化するし……。散々でしたよ。あのロシア人になぜペナルティが科されないんでしょうね? 僕は何度もやられているし、ほかのドライバーもやられているんですけれどね。もしかすると、ロシアの強大な力が働いているんじゃないでしょうか?
タキ:まっ……まあ、そこはあまり踏み込まないほうが、僕らにとっては幸せかもしれないな……(汗)。
公哉:なるほど……(汗)。
タキ:で、決勝レース2はスタートで出遅れたと。
公哉:ハンドクラッチのバイトポイントが相変わらず不安定で……。まあ、自分でうまくコントロールできませんでした。すみません。
タキ:まあ、14番グリッドからでは、上位入賞は望み薄だしな! それにしても、決勝レース2はテレビで観ていてつまらなかったよ。
公哉:僕も……です。長いストレートの終わりにフルブレーキングする箇所はふたつありますが、なかなか抜けません。しかも、僕のクルマはエンジンに伸びがなくて、スリップストリームを使っても追いつけない。クルマのエキゾーストが壊れていたみたいで、その影響もあったはずです。
タキ:ほかのドライバーもなかなか抜けないし、しかもエンジンにハンデがあったらそりゃあ無理だろうな。ところで、公哉くんはまだアブダビに居るんでしょ?
公哉:ええ。当初はいったんイタリアへ戻って、それから日本へ行って大事なミーティングに臨んで、と考えていたのですが、GP2テストの話をいただいたので急きょ居残りを決めました。
タキ:そのほうがいいよ。しっかり英気を養って、GP2テストは頑張ってね。
公哉:でも、アブダビにいてもつまらないですよ。
タキ:トレーニングの合間に、モスクへ行ったり、高いビルに登ったり、ビーチやプールで日光浴でもしたらどう?
公哉:うーん。カンポスのスタッフたちからも、砂漠へ行こうとかクラブへ行こうとか誘われましたが……。それに直射日光を浴びていたら、ここでは5分で干からびますよ。それより、エアコンが効いていて、Wifiがつながるホテルのベッドに寝転んで、ネットサーフィンしたり、音楽を聴いたり、本を読んでいたりするほうが良いですね。
タキ:だめよー! 社会勉強のためにも街中へ出掛けないと。
公哉:ちゃんと社会勉強もしてきましたよ。近くのスーパーへ買い出しに行きましたし、外国人しか従業員がいない怪しい日本料理屋へ行ったり、英語の怪しい運転手のタクシーに乗ってキレそうになったり、日が落ちてからはモスクへも行きました。それはそれでなかなか楽しかったですね。それに、アブダビではホテルの外の飲食店ではお酒が飲めませんし、ホテルに籠っていたほうが英気を養えますよ。
タキ:なるほど……(汗)。ともかく、週末のアブダビのGP2テストではしっかりとね。
公哉:でも、あのロシア人が居るチームですからねぇ。どうなりますやら……。
タキ:モンツァで話したと思うけれど、RTロシアン・タイムの首脳陣は公哉くんを買っているのよ。高く評価しているんだよ。だからこそ、きちんと結果を出したいところだよな。
公哉:結果を出したら、何か良いことありますかね?
タキ:う、うん。あるよ、あるよ、たぶん……。あれ? もしもーし? もしもーし? 公哉くん、公哉くーん。待って……切らないで……(汗)。

(Kojiro Ishii)