2014年11月27日 11:01 弁護士ドットコム
いよいよ冬のボーナスシーズン。使い道を考えて、ウキウキしている人も多いだろう。一方で、退職を考えている人は「辞めどき」に頭を悩ませているようだ。
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ネットの相談サイトには、退職を検討中の人物から「支給日前に『辞めます』と会社に伝えたら、ボーナスは貰えるのか?」という質問が寄せられていた。引き継ぎ等があるため、実際に退職するのは支給後になるという。
支給日の直後に会社を辞めるような場合でも、会社からボーナス(賞与)を支払ってもらえるのだろうか。労働問題にくわしい今井俊裕弁護士に聞いた。
「賞与には、これまで働いたことに対する報酬、つまり賃金の後払い金という性格がありますが、それだけではありません。
企業の利益を従業員に配分するという意味あいや、従業員の貢献度を評価するという性質もありますし、さらには、将来の従業員の勤務への期待という要素も含まれています。
賞与は、こうした諸要素が混じり合った性質のお金なのです」
賞与は単純に「賃金の一部」ではないわけだ。
「もし、賃金規定や労働協約、あるいは個別の労働契約において、使用者に支払い義務があることが定められていれば、それは労働基準法上の賃金に該当します」
たとえば労働契約で、毎年6月と12月に、月給の1カ月分を賞与として支払うと決まっているような場合、「賃金」として支払ってもらえるということだろう。
「ただし、このように、賞与をもらう権利がある場合でも、原則として支給日にその人が在籍していることが支給条件です。
裁判例でも、支給日前に自己都合退職すれば、請求権がなくなるという扱いは適法という判断が出ています。
今後退職をご予定されている方はご留意ください」
そうなると、支給日直前に退職・・・というのは、できるだけ避けたいところだ。
それでは、支給日には在籍しているが、支給日直後に退職することが決まっている、という場合はどうだろうか?
「退職予定者に対して、賞与支給を差し控える、あるいは減額した額しか支給しないという会社もあるでしょうね。
それが許されるかどうかは、退職理由や勤続年数、会社への貢献度等に応じてケースバイケースですが、全く支給しない、という扱いは違法と判断される可能性が高いと思います。
ただ、賞与が『将来の従業員の貢献』への期待を込めて支給される要素を含んでいる場合には、若干の減額が認められることもあり得ます」
今井弁護士はこのように指摘していた。
いま退職を考えている人は、いつ会社を「辞める」と伝えるか、こうした点も考慮に入れたうえで、慎重に判断したほうがよさそうだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
平成11年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における個人情報保護運営審議会、開発審査会の委員を歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html