アブダビ合同テスト期間中、ピットレーンを歩いていると、チーム関係者に何度か呼び止められ、ある質問を受けた。それは「ホンダは、どんな具合か?」というものだ。
レギュラードライバーが数名しか参加しないにもかかわらず、今回のアブダビ・テストには多くの海外メディアが居残って取材を続けた。最大の目的がホンダの復活だったことは言うまでもない。イタリアのテレビ局RAIのテスト初日のトップニュースは「マクラーレン・ホンダ」だったことが如実に物語っている。F1中継のレポーターを務めるステラ・ブルーノも最終的にイタリアの編集サイドがホンダ初走行をF1ニュースのトップで扱ったことに驚いていた。
「というのも、イタリアでF1の中心はフェラーリ。しかも、テスト初日となった11月25日にはフェラーリのガレージにベッテルが訪れ、その模様も私たちのテレビカメラはキャッチしていたんです。蓋を開けてみれば、F1のトップニュースはフェラーリ&ベッテルではなく、ホンダの初走行。でも、視聴者の反応は上々だったらしいです。おそらく、ホンダというより、マクラーレン・ホンダの復活に視聴者は興味を示したんでしょう。何しろマクラーレン・ホンダといえば、アイルトン・セナ。今でもセナはイタリアで絶大な人気を誇っていますからね」
ホンダのニュースに負けてしまったフェラーリのパット・フライ(シャシーディレクター)も、ホンダの復活には特別な思いを馳せている。
「ホンダが最強だった1988年に、私はベネトンで彼らを相手に戦った経験があるからね。あの時の強さといったら、今年のメルセデスなんて比較にならない。とにかく予算と人員、双方のかけかたが半端じゃなかった。しかも、再びパートナーを組む相手はマクラーレンだ。彼らはここ2年苦しんでいるが、私はマクラーレンにも在籍していたから、彼らがそんなに長い間、失敗し続けたりしないチームだっていうことはわかっている。間違いなく我々にとって驚異的な存在になるだろう」
多くのグランプリ関係者がホンダに特別な思いを寄せる一方で、現実的な見方をしている者もいる。レッドブルのアドバイザーを務めるヘルムート・マルコは興奮気味のメディアに、こう言って釘を刺した。
「今はもう80年代じゃない。2013年まで最強だった我々レッドブルもパワーユニットが変更された今年、突然失速した。この世界で、昨日までの栄光は未来に向けてなんの保証にもならない。もちろんホンダが勝てないなんて言うつもりもない。勝てるパワーユニットを準備できれば勝てるし、それができなければ我々のように苦労するというだけだ」
ホンダは初日に続いて、2日目もトラブルに悩まされている。ついにアブダビ・テストでF1に復帰したホンダ。果たして、最強伝説を復活させることはできるのだろうか。
(尾張正博)