2014年11月25日 22:41 弁護士ドットコム
「ブラックバイト」についてのアンケート調査結果を発表する記者会見が11月25日、厚労省で開かれた。弁護士やNPOなどでつくる「ブラック企業対策プロジェクト」が開いた記者会見には、ブラックバイトの経験があるという大学生が電話を通じて登場し、コンビニ店での「罰ゲーム」のエピソードを語った。
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「罰ゲームつきコンビニ」で働いていたというのは、滋賀県の大学2年生の男性。この11月に辞めるまで、約1年半の間、あるコンビニチェーン店でアルバイトをしていた。その店舗では、オーナーが独自に定めた「罰ゲーム」があったという。
たとえば、この店では、お中元など催事商品の「販売ノルマ」が、アルバイト店員にも科せられていた。多くの学生バイトは家族や親戚に頼んで、商品を予約してもらっていたが、達成できないと「反省文」を書かなければならないのだ。
そして、オーナーが反省文の内容に満足しない場合、待っているのが「罰ゲーム」だった。
罰ゲームの内容は、ゴミ捨て場など、ふだん誰も掃除をしたがらない場所の清掃だ。この罰ゲームや、長時間に及ぶオーナーの説教を避けるため、男性はケーキやチキンなどの商品を「自爆営業」で買い取ったことがあったそうだ。
「罰ゲーム」はほかにも、レジの計算ミスがあったときや、商品の発注・陳列ミスがあったときなどにも科されていた。ミスがあったときは、バイトが差額を補填したり、商品を買い取ったりすることを要求されていた。
そして、この罰ゲームやオーナーの説教タイムは、ほとんどの場合、シフト時間外として、賃金が出なかったという。
今年4月には、オーナーがこうしたルールをまとめ、「マニュアル」としてアルバイトに配ったという。ポケット付のクリアファイルにA4の紙が入れてあり、お弁当の陳列方法など、通常業務のやり方が書かれているのだが、そうしたルールに混じって「・・ができなかった場合には罰ゲーム」などと記載されているため、「罰ゲームマニュアル」と呼ばれていたという。
そんな職場で、男性はなぜ働き続けたのか。
「職場の他の人たちに迷惑をかけられない」というのが、主な理由だったと男性は語る。自分が休むと、代わりに働かなければならないのは、同じような境遇で働く学生アルバイト。仲の良い学生たちに、仕事を押し付けたくなかった、というわけだ。
男性は、アルバイト向けの労組に相談を持ちかけていたが、その最中に、両親がオーナーに申し立てて、バイトを辞めることになったそうだ。実家暮らしだったため、バイトで体調を崩し、大学にも満足に通えなくなった男性のことを見かねた家族が、問題解決に動いたのだという。
なお男性は、商品の発注から、他のバイトへの陳列指示まで一人でこなすようになっていたが、時給は「830円」だったという。
ブラックバイトについてのアンケート調査を実施したチームのメンバーで、NPO法人POSSE代表の今野晴貴さんは、会見で次のように指摘していた。
「いまは正社員が本当に少ない。学生が来なければ商品の発注もできない、学生が休んだら店が開けられない、そういう店がざらにある。すき家の『ワンオペ』と同じような状況だ。その人がいないと、職場が回らない状況がある。
そして、試験前に急に呼び出されたりといったことを繰り返しているうちに、学生アルバイト自身も、自然と休めないのが当然だと思うようになってしまっている」
(弁護士ドットコムニュース)