2014年11月25日 11:31 弁護士ドットコム
朝のさわやかな時間帯に働けば、夜のダラダラ残業もなくなる——。最近、「朝型勤務」が企業の間で広がりを見せている。仕事を効率化させることで、日本企業の課題である長時間労働の削減につなげることが狙いだ。
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伊藤忠商事では、今年5月から朝型勤務を正式導入。国内に勤務する従業員約2600人を対象に、午後10時から午前5時までの深夜勤務を禁止して、午前5~9時の勤務に深夜勤務と同様の「早朝割り増し」を支給する仕組みだ。昨年10月のトライアル導入後、総合職1人あたりの1カ月の時間外勤務は4時間減ったという。
ただ、「朝から働きたくない」「夜に落ち着いて働きたい」という夜型の人がいてもおかしくないだろう。就業時間の変更も含めた全社的な制度改正で、「朝型勤務」を強いても問題はないのだろうか。光永享央弁護士に聞いた。
「長時間労働の削減という目的は、今年11月1日に施行された過労死等防止対策推進法の趣旨にも沿っており、正しい方向性だと思います。
また、その手段として『朝型勤務』を推奨するのも合理的です。早朝は通勤ラッシュを避けられますし、電話も鳴りませんので、頭がクリアな状態で書類作成などに集中できて、能率も上がるでしょう。実は私も数年前から、毎朝午前7時に事務所に出てきて、その分早く帰っています」
では「夜型人間」はどうすればいいのだろうか。
「もちろん、受験勉強のように、夜のほうが仕事に集中できる人もいるでしょうが、仕事は所定労働時間内に終えるのが原則です。
労働者側としては、残業を当然のごとく受け入れて『夜のほうがいい』と言うのではなく、 夜も朝も残業しないで済む勤務体制を目指して、人員の増加や業務量の削減などを会社に求めていくべきです。
その意味で、伊藤忠商事の試みは、『残業ゼロ』に向けた過渡的なものとして位置づけるべきでしょう」
ただ、強制するような事態に発展すると、問題はないのだろうか。
「伊藤忠商事のケースと異なり、いわゆる『9時~5時』だった会社が、午前6時始業~午後2時終業のように、所定就業時間を大幅に『朝型』に変更するのは、労働者にとって重大な不利益変更ですので、一方的に強行することは許されません。
また、人間の生体リズム(サーカディアン・リズム)は働き方に関わらず不変であり、午前3~4時に起床するような生活を続けると、血圧上昇等の健康障害をもたらすことが知られています。極端な『朝型勤務』はやめたほうがよいでしょう」
光永弁護士はこのように説明していた。自分の生活リズムとも向き合いながら、効率的に仕事をこなせる環境をつくることが大切になるだろう。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
光永 享央(みつなが・たかひろ)弁護士
一橋大学社会学部卒。2007年弁護士登録(旧60期)。福岡県弁護士会所属。労働者側専門の弁護士として過労死事件や労働事件を数多く手がけ、新卒学生の採用「内々定」取消しの違法性を認める画期的判決も獲得している。
事務所名:光永法律事務所
事務所URL:http://www.mitsunaga-roudou.jp/