アブダビに訪れ、シルバーストンで実施されたテストについて語ってくれた新井康久ホンダF1総責任者 ホンダF1の総責任者、新井康久氏がアブダビGPを訪れ、先日シルバーストンで行われた、新生“マクラーレン・ホンダ”のフィルミング走行について語ってくれた。
「とりあえず走った、というだけです。皆さんが期待するようなパフォーマンス云々という段階ではありません。本当に数周という感じ。他のパワーユニットメーカーの、今年のヘレステストの段階と同じくらいだと思います」
無事に走行はできたものの、当然様々な問題が発生したという。
「ノイズやシステムの通信だとか、想定内のトラブルが起きています。ただ、それを解決するのに、少し手間取っているという状況です。各システムのコントローラを立ち上げる順番も、ひとつずつ確認しながら作業しています。たまに、起動しない機械があったりして、その対処をしながら、という感じです」
ホンダ製パワーユニットが搭載されたのは、MP4-29Hという、マクラーレン製のテストシャシー。電気システムのチェックが、主な目的だという。
「今年のマクラーレンのマシンをベースに、切った貼ったで作ったクルマです。バルクヘッドやトランスミッションの座標はレギュレーションで決まっているので合っていますが、それ以外のパッケージはウチとメルセデスとではたぶん違うので。手作業で合わせていきました」
シルバーストンのテストでは、あくまでチェックだけではあるが、すべてのシステムの通電には成功したようだ。
「クーリングの確認までは行っていません。回生も一応はできましたけど、まだパフォーマンス云々のレベルではありません」
コースに出ていったマクラーレン・ホンダのマシンを見て、さぞ感動したに違いないと思ったが、そこは非常に冷静だったという。
「あー、ようやくトラックに出たなと思っただけで、全員冷静に見ていましたよ。マクラーレンのスタッフも、ホンダのスタッフもです。ただ、テストドライブを担当したオリバー・ターベイは、『マクラーレン・ホンダの最初のクルマが、最初にトラックに出ていく時にドライブできて、感動した』と言ってくれました。今後は、その性能にも感動してくれるといいんですけどね」
アブダビGP終了翌々日の11月25日から2日間の予定で、同サーキットでF1の合同テストが行われる。ホンダはこのテストでマクラーレンのテスト用シャシーMP4-29HにF1用パワーユニットを搭載し、テスト走行する予定になっている。
このテストでのプログラムの中心も、やはりシステムチェックということになる。
「プログラムについてはこれから決めますが、ちゃんと走れたとしたら、日本やマクラーレンと通信を繋いで、そのオペレーションのチェックもしなければなりません。我々の場合はホンダのネットワークを使うんで、色々なところを監視しなければいけません。ですので、時間はかかると思います」
新生マクラーレン・ホンダは、2015年が1年目。しかし、当然その初年度から勝ちを目指していくと、新井氏は語ってくれている。
「我々は勝つためにレースをやりますから。当然、1年目から勝ちを目指します。マクラーレンと組むということは、そういうことだと思っています。『1年目は練習です』だなんて、そんなことは許されません」
シルバーストンのテストで走ったマシンには、「HONDA」のロゴがエンジンカウルに入れられ、ノーズ先端に「H」のマークが取り付けられていた。しかし今後は、この表記についても変更される可能性を示唆している。
「F1を観てくれる世代が広がっていかないと、F1がなくなってしまうのではないかと思っています。実際、“Powered by HONDA”を知らない方もいらっしゃいますから。今はマクラーレンと、契約でそれも含めて話をしているところです。出ていくことで、ホンダの知名度を上げていきたいですからね。ドライバーを好きになっていただく、ということでも良いと思っています」
いよいよ明日から、新生マクラーレン・ホンダが、実際に動き出す。いったいどんな走りを我々に見せてくれ、どんな音を響かせるのか? 期待感は日に日に高まっている。なお、テストを担当するドライバーは、今季のGP2でランキング2位になった、ストフェル・バンドーンになると言われている。
(F1速報)