3戦ぶりにF1に復帰したケータハム。もしかしたら最終戦アブダビGPは小林可夢偉&ウィル・スティーブンスというコンビではなく「可夢偉&マックス・チルトン」になっていたかもしれない。
11月22日、サーキットに姿を見せたチルトンは、所属していたマルシャ・チームがアブダビに参戦できずに終わった心境を次のように語った。
「本当に残念でならない。アメリカGPにもブラジルGPにも行かなかったのは、チームが復活を目指して懸命に努力していたことを知っていたから。それを知りながら、自分の就職活動はできないよ。もちろん、つい最近まで自分が戦っていたライバルたちの出るレースを自宅のテレビで見るのは決していい気分じゃない。でも、僕はマルシャがアブダビへ行くと信じていた。だから、ケータハムから『アブダビGPでケータハムのマシンでレースに出ないか』という連絡があったけど断ったんだ」
ケータハムは11月16日に可夢偉の起用を発表したが、チームメイトの決定はエントリーが締め切られる11月20日まで延ばされていた。その理由のひとつが、チルトンとの交渉だった。ケータハムはチルトンが持っているスーパーライセンスに興味を持ち、彼をサポートする投資家にも興味があった。アブダビGP参戦のために立ち上げたクラウドファンディングが、まだ目標の金額に達していなかったからだ。
だが、チルトンはケータハムの申し出を断った。そこで、ケータハムの管財人であり、新しくチーム代表になったフィンバー・オコンネルは、さまざまな方法で資金を募った。その中には、日本からのサポートもあった。サイドポンツーン側面の下段には「Hiromasa Asai」「Hiroshi Shoji」という日本人の名前がある。チームに確認すると、「これはクラウドファンドで募ったものだ」という。
もうひとつは、今回ケータハムのマシンのリヤウイングに描かれている「A1 OPTION」という投資会社だ。この会社自体は海外バイナリーオプションの業者だが、この会社がケータハムにスポンサーする橋渡し役を演じたのは可夢偉のパーソナルスポンサーである日本の不動産会社の社長だ。
個々のスポンサー額がいくらかは明らかにされていないが、日本には可夢偉を応援する人や企業がいる。その思いを胸に11月23日、可夢偉は自身75戦目のレースをスタートする。
(尾張正博)