2014年のF1ワールドチャンピオンは、ルイス・ハミルトンなのでしょうか? それとも大逆転でニコ・ロズベルグのモノとなるのでしょうか? 泣いても笑っても、あと数時間後には、その結果が出ます。
予選アタックでも、それから舌戦でも、ふたりはライバルであるチームメイトを意識し、対決姿勢を鮮明にしています。その戦いは、予選までを見る限り、ロズベルグに向いているような気がしてなりません。
ロズベルグがチャンピオンに輝くためには、自らが勝つだけでは不十分。ハミルトンとの間に1台以上のマシンに入ってもらう必要があります。その最有力候補は、現時点ではウイリアムズのバルテリ・ボッタスです。このウイリアムズが速さを取り戻したことが、ハミルトンにとっての最大のプレッシャーであるはずです。
私は昨日の時点までは、メルセデスの次に速いのはレッドブルの2台だと思っていました。しかし、土曜日になるとウイリアムズの戦闘力が急上昇。ボッタスとフェリペ・マッサは、あわやポールポジションという、メルセデスに匹敵する予選の戦いぶりを披露して見せました。もちろん、ハミルトンの予選アタックにミスがあったため、タイム的にはかなり肉薄しているわけですが、彼らの存在が、ハミルトンにとってプレッシャーになっていることは、間違いありません。
もし仮に、スタートでウイリアムズを前に出してしまった場合、厄介な相手になるはずです。ウイリアムズはすべてのセクターの最高速計測地点で1-2という、圧倒的な最高速を発揮。全出走車中、もっとも抜くのが難しい存在なのです。ハミルトンは、スタートで「ウイリアムズに先行されてはならない!」というプレッシャーに曝されるのです。
発言や佇まいでも、ハミルトンとロズベルグの違いが鮮明なように感じています。これは印象でしかないのですが、ロズベルグがハミルトンを執拗に攻撃するようなコメントを発しているのに対し、ハミルトンは防戦一方……そんな気がしてなりません。また、心なしか、ハミルトンをパドックではほとんど見かけないのに対し、ロズベルグの方はよく見かけるような気がします。しかも、彼の顔には、今の状況を心から楽しんでいるような、そんな余裕すら感じてしまうのです。
思い出すのは2010年。マーク・ウェーバーとフェルナンド・アロンソがチャンピオン争いを繰り広げていた年の最終戦。舞台は同じアブダビでした。ウェーバーが予選終了後、プレッシャーに押しつぶされ、正体を無くしたような格好で、家族に両脇を抱えられ、サーキットを後にする……という光景を目撃したのです。結局ウェーバーは決勝で速さを見せることはできず、それをカバーしに行ったアロンソと共に後方に沈み、もうひとりチャンピオンの可能性を残していたセバスチャン・ベッテルが大逆転で載冠! プレッシャーに打ち勝つことの重要さが凝縮されていたようなレースだったように思います。今年も、パフォーマンス云々より、プレッシャーへの対処の仕方が、物事を最終的に左右しそうな気がしてなりません。
ウイリアムズの後方は、大きく差が開いてしまいました。しかし、返す返すも残念なのが、フレキシブルフロントウイングの疑いで予選結果を抹消され、最後尾からのスタートを余儀なくされてしまったレッドブルの2台。メルセデスAMGには劣るものの、フリー走行からかなり高い戦闘力を発揮していました。彼らが最後尾から、どんなレースをしてくるのか、これにも注目したいところです。しかも、ベッテルにとっては、大成功をおさめたレッドブルとの袂を分かつ最後のレース。その伝説ともなりうる勇姿を、しっかり目撃してください。
なお、トップ4台の直後5番グリッドからスタートするのは、来年大出世するはずのダニール・クビアト。フリー走行2回目のロングランではかなり良いペースで走っていたので、この順位をキープするのは比較的容易なのではないでしょうか?
マクラーレンのジェンソン・バトンがその後ろ。ロングランのペースはあまり良くありませんでしたが、シーズン後半にかけ来季パーツを多数投入、戦闘力を上げてきている同チームだけに、その動向が注目されます。また、その去就が未だ不透明なバトンの勇姿も、ぜひ目に焼き付けておきましょう。
その後ろからフェラーリの2台。彼らは今回に関してはこの位置がやっとというところで、なんとかこの位置をキープし、最後まで走り切って最大限のポイントを稼ぐというレースになりそうです。
それから、もうひとり注目すべきドライバーの名を挙げておきましょう。それは、16番手スタートの小林可夢偉選手です。チームの危機的状況にも関わらず、この最終戦に出走を果たすことになりました。可夢偉自身も「これがF1での最後のレースになるかもしれない。だから、悔いを残さず、思う存分レースをする」と語っていたとおり、彼の集大成とも言えるレースになることは間違いないです。彼にも、ぜひ声援を送ってください。
なお決勝の戦略ですが、スーパーソフトでスタートする場合には、その後ソフト→ソフトと交換する2ストップ戦略がメインとなりそうです。その場合、最初のピットストップは10周目以前。このタイミングも大きく勝負を分けそうです。なお、予選トップ10以降のスーパーソフトタイヤでのスタート義務がないドライバーの中には、ソフト→ソフト→スーパーソフトと繋ぐ者もいるはず。ラバーグリップが高くなるレース終盤にスーパーソフトを使用した方が、長く速いタイヤを使うことができるはずです。なお、ソフトとスーパーソフトのラップタイム差は1秒以上。デグラデーションはスーパーソフトで1周あたり0.1秒程度というところでしょうか。
2014年F1最終決戦、アブダビGP決勝レースは、日本時間の本日22時スタート。ぜひお見逃しのないように。
(F1速報)