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「マイナンバー導入で企業の不正がバレやすくなる」税理士が「導入後の変化」を予想

2014年11月23日 14:11  弁護士ドットコム

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来年10月に予定されている「マイナンバー」の交付まで1年を切った。マイナンバーとは、住民票を有するすべての人に通知される12桁の番号だ。


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国はマイナンバーの導入によって、個人の社会保障や税、災害対策などの情報を一元管理し、行政の効率化と国民の利便性を高めることを目指している。



このマイナンバーにあわせて、実は企業にも「法人番号」が付与される。「個人番号」と「法人番号」の導入によって、いったい何が変わるのだろうか。佐原三枝子税理士に聞いた。



●社会保険に入っていない会社がバレてしまう?


「マイナンバーという通称で知られている制度ですが、正式名称は『社会保障・税番号制度』です。社会保険や国民健康保険、年金、税金の徴収・納付について、個人と法人にそれぞれ番号が与えられます」



どんな変化が予想されるのだろうか。



「法律に従って、きちんと税金や社会保険料を納めている法人や個人には利便性が増すことになりますが、法律に従っていない場合は、これまでの不正や間違いが発見されることになるでしょう。



たとえば、法人の場合は社会保険を適用しなければなりませんが、それをせずに、役員や従業員が自分で国民健康保険と国民年金を支払っている、という会社が少なからずあるように聞きます。



年金事務所が、社会保険に未加入の法人に対する指導をしらみつぶしに行ってこなかったこともあり、負担の重い社会保険の適用を意図的に逃れてきた場合や、そもそも、法人に社会保険への加入義務があることを知らずにいる場合もあると思われます。



しかし、法人や個人(役員・従業員)に、税と保険に共通のマイナンバーが付けられると、番号をソートするだけで、社会保険に未加入の法人や、高額の給与があるにもかかわらず社会保険に加入していない人が、すぐにわかるようになるのではないでしょうか」



●住民税の脱税もバレてしまう?


ほかにはどういった不正が明らかになる可能性があるのだろうか。



「給与支払報告書を住所地の市町村に提出せずに、住民税を脱税するという不正を聞いたことがあります。



給与支払報告書は源泉徴収票によく似た書類で、住民税の計算をするために、給与の受給者の住所地の市町村役場に、勤務先の事業所が送付するものです。



マイナンバー制度が始まれば、源泉徴収票や給与支払報告書に記載する個人情報は、住所・氏名・生年月日そしてマイナンバーとなり、税務署と市町村役場が同じ番号で個人を管理することになります。



すると、税務署に源泉徴収票を提出しているのに、市役所に給与支払報告書の提出がなければ、即座に住民税の脱税が明るみにでるでしょう」



個人事業者の場合はどうなるのだろうか。



「高額の所得がありながら国民年金を払っていない個人事業者も、番号のソートですぐに発見されるようになると予想されます。



マイナンバーの通知まであと1年を切りました。特に、事業所の代表者の方は、社会保険や税のコンプライアンスについて見直す機会と考えたほうがいいでしょう」



佐原税理士は、このように呼びかけていた。



【取材協力税理士】


佐原 三枝子(さはら・みえこ)税理士・M&Aシニアスペシャリスト


兵庫県宝塚市で開業しています。工学部、メーカー研究所勤務から会計の世界へ転向した異色の経歴です。中小企業の抱える悩みをすべて解決したい!との思いから、税務にとどまらず、経営改善対策、M&Aによる事業承継も手掛けています。


事務所名   : 佐原税理士事務所


事務所URL:http://www.office-sahara1.jp/



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