F1の予選終了後、18時40分にスタートが切られたGP2アブダビラウンドのレース1。ポールポジションスタートはARTのストフェル・バンドーン、2番手には今季のGP2チャンピオンであるジョリオン・パーマー(DAMS)がつける。日本の伊沢拓也(ART)は12番手、佐藤公哉(カンポス)は16番手からのスタートである。
グリッドからチームスタッフが離れ、フォーメーションラップがスタート。しかし、1台だけ発進できないマシンがいる。赤と白に彩られた、伊沢のARTである。
「クラッチのセンサーにトラブルがあったと思います。ゼロ設定の位置が、勝手に変わってしまうんです。朝、エンジンをかけてチェックした際にもトラブルの兆候が確認できたので、チームはそれを修正しました。そのため、レコノサンスラップは問題なかったのですが、グリッド到着後にまたおかしくなってしまいました」
この時のマシンは、ステアリングに付けられたクラッチを動かすだけで動力が繋がってしまうという状態で、コントロールのしようが無かったようだ。結果、エンジンストールしてしまった伊沢のマシンはマーシャルによってピットに押し戻され、ピットスタートを余儀なくされる。
伊沢を除いた25台がグリッドに着き、レーススタート。今度は、10番手のジュリアン・リール(カーリン)がストールし、最後方に下がってしまう。金曜日の予選後、「スタートに自信がない」と語っていた佐藤は、『自分のスタートは上手いんだ』と、伊沢の教えに従って自己暗示をかけてスタートに臨んだという。結果、まずまずのスタートを成功させ、前方のマシンがコースオフした影響などもあり、1周目をスタート順位キープで周回してくる。
しかし、1周目の最終セクターで、レネ・ビンダー(アーデン)、ジョン・ランカスター(ヒルマー)、マルコ・ソレンセン(MP)らが絡む事故があり、いきなりセーフティカーが出動。3周目までSCランが続くことになる。
4周目からレース再開。各所で接近戦が繰り広げられる中、ターン20でラファエル・マルチェッロ(レーシング・エンジニアリング)が佐藤の後部に追突。5周目には今度はアルテム・マルケロフ(ロシアンタイム)が、佐藤曰く「クルマの向きが変わるくらい」激しく激突してきたため、佐藤は左のフロントウイングと、サイドポンツーンの前端を損傷してしまう。
6周目終了時点から、スーパーソフトタイヤでスタートしたマシンのタイヤ交換が開始。先頭を走っていたバンドーンも、ピットインしてミディアムタイヤに変更する。伊沢はこの周に、佐藤は8周目終了時にタイヤ交換している。なお佐藤はタイヤ交換の際に、壊れたノーズも交換している。
これで先頭に立ったのはパーマー。ミッチー・エバンス(ロシアン・タイム)、ジョニー・チェコット(トライデント)を従えて逃げる。伊沢はスタートでのストールで後方に下がっていたリールを攻め立てるが、なかなか抜くには至らず。逆に徐々に差をつけられてしまう展開となる。なお伊沢はセクター3、佐藤はセクター2が鬼門と前日に語っていたが、この日は周囲と変わらぬペースで、それぞれのセクターを通過している。
21周目終了時点で、先頭のパーマーがピットイン。こちらはミディアムからスーパーソフトに変更する。このタイミングでバンドーンが再び先頭に立つものの、スーパーソフトの性能を活かし、パーマーが1周あたり1秒以上速いペースで差を縮める。このままなら追いつくのも時間の問題か……と思われたが、26周目を境に両者のラップタイムが逆転。つまり、ここまでにパーマーはタイヤを使い切ってしまったため上位に迫ることができず、レースの大勢が決する形となる。
後方では伊沢15位、佐藤16位と並んで走っていたが、結局佐藤が伊沢に追いつくことはなく、ナタナエル・ベルトン(ラザルス)の後退により順位をひとつずつ上げ、そのままチェッカーを迎えている。
優勝はバンドーンで今季4勝目。パーマーはシーズン12回目の表彰台で、獲得ポイントを276点までに伸ばした。
レース後に伊沢は「明日は14番手スタートになると思います。入賞圏内の8位はそう遠くないので、なんとか入賞を目指していきたいと思います」と、一方佐藤は「いつものことですけど、無事故無違反で終わりたい」と、今年最後のGP2レースに向けた意気込みを語ってくれた。
明日のGP2アブダビラウンド、レース2は、現地時間の14時20分(日本時間の19時20分)より行われる予定だ。
(F1速報)