ルイス・ハミルトン334点 vs ニコ・ロズベルグ317点——17点差で迎えた最終戦アブダビGPは、ヨーロッパラウンド以降、いわゆるフライアウェイで最も多くのメディアが集結している。もちろん、ここでタイトルが決定することが主な要因であることは間違いない。
しかも最終戦はポイントが2倍になる。果たして、アブダビに駆けつけたメディアはハミルトンとロズベルグのどちらがチャンピオンになると予想しているのだろうか。
まず、イギリスの新聞記者バイロン・ヤングの予想だ。
「ルイスがタイトルを獲るだろう。彼は2011年にここで優勝しているだけでなく、2012年もマシンにトラブルが起きていなければ勝っていたほど、ヤス・マリーナ・サーキットを得意としているからね」
次にアメリカ人ジャーナリストのダン・クヌットソンの意見だ。
「おそらくルイスがレースに勝って、タイトルを獲得するだろう。直前のブラジルGPではニコに負けたルイスだが、レース中はずっとコンマ2秒、ニコより速かった。それはブラジルGPだけでなく、シーズンを通してだったことを考えると、ニコが逆転できる可能性はかなり低い」
これに異を唱えるのが、ドイツ・フランクフルター・アルゲマイネ紙の記者であるアンノ・ヘッカーだ。
「ブラジルGPはニコにとって大きな転機となった。どうすればハミルトンを抑えることができるか学んだからだ。だから、アブダビではニコが勝つだろう。それでもハミルトンが2位に入れば、ハミルトンがチャンピオンになるが、アブダビは番狂わせが起きやすい特殊なサーキット。ウイリアムズやレッドブルが2位に入る可能性は十分ある」
同郷のロズベルグをチャンピオン候補に挙げたヘッカーだが、ドイツ人の編集者であるマイケル・シュミットは「ハミルトンがチャンピオンになる」と予想。大方の予想はハミルトン優勢である。
ただし、ハミルトン王者を予想する多くのメディアが必ず最後に語ったフレーズがある。それは「ハミルトンのマシンにトラブルが発生しなければ」である。それはメルセデスのスタッフが最も気をつけ、恐れている事態だ。あるメルセデスのスタッフは言う。
「このグランプリは、いつもとちょっと違うんだ。ドライバーふたりはいつも以上にリラックスしていて、エンジニアやメカニックが緊張している。なぜなら我々のミスでタイトル争いが台無しになりかねないからね」
その緊張感がトラブル防止となるのか。あるいはミスを誘発するのか。圧倒的なアドバンテージを誇ってチャンピオンシップをリードしてきたメルセデス。だが、最終的には人間が持っている能力が勝敗を決するという構図は昔も今も変わりない。
(尾張正博)