いよいよこの日がやって参りました。2014年F1世界選手権の最終戦、アブダビGPでございます。泣いても笑っても、日曜日の夜には今シーズンのチャンピオンドライバーが、そして今季の全ての順位が決まります。そして、F1史上初のダブルポイントレース。つまり優勝者は50ポイント、2位は36ポイントを獲得できることを意味します。
ではそのアブダビGPでの勢力図を、フリー走行(FP)2回目の走行結果から見ていくこととしましょう。
そのアブダビで強いのは……もちろん、今季を象徴するように、メルセデスAMGが圧倒的な速さを見せています。チャンピオンを争うふたり、ルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグの差は0.083秒とごく僅かでしたが、その後方3番手のケビン・マグヌッセンとの差は0.782秒。今季見慣れた状況であり、決勝では、誰にも邪魔されない
、このふたりの一騎打ちのチャンピオン争いが繰り広げられることでしょう。
ロングランの詳細を見て行くと、全体的にハミルトンの方が良いペースで走ることができているようです。今回のアブダビGPには、ソフトとスーパーソフトの2種類のタイヤが持ち込まれていますが、ソフト装着時の両者のペースはほぼ互角なのに対し、スーパーソフト装着時のペースはハミルトンの方が0.5秒弱程度速そうなのです。これが何を意味するのか……ハミルトンはロズベルグの前でゴールすれば、無条件でチャンピオンになれます。このペースの差は、ハミルトンにとって非常に有利な状況と言えそうです。
それから、3番手のドライバーとの差が非常に大きいという点も、ハミルトンにとっては歓迎すべき状況。もし仮にロズベルグが優勝したとしても、ハミルトンは2位に入ればチャンピオンなのです。やはり、すべての面が“ハミルトン優勢”の根拠となってしまう。あとは、彼がプレッシャーに打ち勝つことができるかどうか。「プレッシャーは感じていない」とのコメントを出していますが、現地で見ている限り、ハミルトンにかかるプレッシャーはかなり大きく、ナーバスになっている印象です。対するロズベルグは、FP2開始のほんの数分前までリフティングに興じるなど、その表情を見ても非常にリラックスしている様子。さて、どんな結果になるか、注目しましょう。
ロズベルグにとっての希望、ハミルトンとの間に入ってくれそうな、“3番手”のドライバーは、いったい誰なのでしょうか? ロズベルグはウイリアムズのバルテリ・ボッタスに期待しているようですが、私の目にはレッドブルのふたり、セバスチャン・ベッテルとダニエル・リカルドのどちらかではないかと思えます。特に私が注目したいのはベッテル。FP2ではソフトタイヤを履いてロングランを行いましたが、そのタイヤでの17周目から20周目にかけての4周、メルセデスにも匹敵するペースで走っています。過去5年で3勝、ここでチャンピオンを獲得したこともあるベッテルにとって、ヤス・マリーナは縁起のいい場所。今季一番の活躍を見せても、決して不思議ではありません。「メルセデスの邪魔はしないよ」と語っていますが、実は何か一発を狙っている……ようにも思えます。
次に注目したいのは、ウイリアムズでもマクラーレンでもなく、トロロッソです。タイムシート上では特に目立つ存在ではないのですが、ロングランではダニール・クビアトが、本家レッドブルに迫る走りを披露。スーパーソフトでもソフトでも、です。来季レッドブル入りを決めているクビアトにとって、これは非常に重要なアピールポイントだと言えそうです。こちらにもご注目を。
ロズベルグに“打倒ハミルトン”の期待を寄せられているボッタスは、そのクビアトの次という印象。ソフトタイヤ装着時のペースは、メルセデスAMGとレッドブルから1周あたり1秒程度遅いようです。それより気になるのは、スーパーソフト装着時のロングランペース。走り始めこそ上位に匹敵する周回が1周あるのですが、その後がガクンとペースを落とし、メルセデスAMGやレッドブルから1周あたり1.5秒も遅いペース。しかも、1周につき0.125秒程度のデグラデーションの兆候もハッキリ見て取れます。ボッタスは「あるコーナーではフロントがルーズで、またあるときはリヤがルーズ。明日に向け、やらなければいけないことがある」と語っています。ウイリアムズが復調して来れるのか? ただ、ここ数戦のウイリアムズは初日走行失敗→土曜日復調ということが多い印象。今回も、その改善に期待を寄せるしかないでしょう。
タイムシートでケビン・マグヌッセンが3番手につけたマクラーレンは、ロングランのペースはあまり特筆すべきものではありません。燃料搭載料が分からないですが、トロロッソはもちろん、フォース・インディアよりも低調なものです。これはバトンも同様。明日のフリー走行3回目を見て、判断したいところです。
さて、今年のF1も残り2日。レギュレーション大変更初年度、その最終戦のレースはいったいどんな展開になりますか? 現時点ではメルセデスAMGがチームメイト同士でしのぎを削りながら逃げ、ベッテルが追う……という形を予想します。そして、2日目にウイリアムズがどこまで上がってくるかにも注目です。
(F1速報)