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渡邉美樹氏に「重大な過失」 ワタミ過労死裁判で原告、改めて責任を追及

2014年11月20日 19:40  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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東京地方裁判所で2014年11月20日、ワタミ過労死裁判の第6回口頭弁論が行われた。原告(遺族)側はワタミおよびワタミフードサービスの責任のほか、当時代表取締役社長だった渡邉美樹氏ら個人の責任についても、改めて追及した。

今回提出されたワタミ側の準備書面には原告の主張への反論はなく、あと1~2回の口頭弁論で証人尋問に進む可能性もある。渡邉氏が再び出廷するかどうかにも注目が集まりそうだ。

36協定の時間外労働は「月120時間」「年950時間」

9月に行われた第5回の口頭弁論で、ワタミ側は労働基本監督署から08年4月から13年2月までに受けた「是正勧告書」24件、「指導票」17件を提出した。原告の再三の要求によって、ようやく提出された書面だ。

書面によると、08年6月に過労自殺した森美菜さんが勤務していた和民・京急久里浜店以外にも、会社全体が過酷な労働環境を従業員に強いていたことを示している。是正勧告書における労基署からの指摘は、主に5つに分けられる。

・1年ごとの定期健康診断の不実施(8件)
・深夜業務従事者の6か月ごとの定期健康診断の不実施(5件)
・36協定を超える時間外労働(12件)
・法定の休憩時間の不順守(14件)
・衛生推進者の未選任(6件)

これを見ると、長期間にわたりたびたび同一の内容で是正勧告を受けていることが分かる。森さんが勤務していた久里浜店では、繁忙期においては年に6か月を限度とし「月120時間」「年950時間」の残業・休日出勤をさせることが可能な36協定が結ばれていた。

かなりの長時間労働が行われていた可能性があるが、この時間外労働時間に研修や創業記念祭への参加といった時間は含まれていなかったようだ。原告弁護団の原島有史弁護士は裁判後の報告集会で、こうしたワタミの状況について、こう話している。

「厚労省の定める基準(時間外労働月80時間)で考えれば、この36協定は労働者が過労死しても仕方ないような長時間労働を設定している」

「形式的には書面などで『改善する』と言うが、結局、労基署からの注意・指導に何も対応していないというのがワタミ株式会社の本質だ」

「取締役として是正できなかった」責任どこまで

会社が安全配慮義務を怠っていた場合、責任は取締役に及ぶこともある。2013年に判決が確定した居酒屋運営会社「大庄」の過労死裁判では、平辰社長ら4人の役員の個人責任が認められている。長時間労働を放置したことが「重大な過失」と認められたからだ。

今回の裁判でも同様に、当時ワタミ代表取締役を務めていた渡邉美樹氏や、当時のワタミフードサービス代表取締役・栗原聡氏らの責任が追及されている。原告弁護団の玉木一成弁護士は、会社全体が長時間労働を常態化させている体制を「取締役として是正できなかった」ことがポイントだと話す。

「『365日24時間死ぬまで働け』という言葉に現れているように、長時間労働を促進し、社員の健康を憎悪させるような労務体制を構築するのに積極的な役割を果たしており、(渡邉美樹氏の)善管注意義務違反の程度は重いといえる」

「ワタミフードサービスの各店舗における長時間労働を放置、容認していたものであり、重大な過失がある」(原告第5準備書面より)

今回の口頭弁論では、原告側から証拠として『検証・ワタミ過労自殺』(岩波書店刊)という書籍も提出された。森美菜さんの過労死はなぜ起きたのか、ワタミ内部の問題に迫った内容だ。美菜さんの遺族は報告集会で、こう話した。

「遺族にとっては『過労自殺』という『殺』の言葉が非常に辛い。しかし中澤さん(著者)は、『ワタミが殺したんだと。だから題に殺という言葉を入れたい』と。私たちの気持ちも同じだった」(父・森豪さん)

「私自身は辛くて…まだ全部本を読めない…です。ワタミの実態を、皆様に良く知ってもらえればと思う」(母・祐子さん)

次回の口頭弁論は2015年1月19日の予定だ。

※次回(第7回)の口頭弁論は、2015年1月19日から、2015年2月2日に変更されました。※

あわせてよみたい:前回の裁判(第5回口頭弁論)の詳報