2014年11月20日 19:31 弁護士ドットコム
水を飲んだだけで63万円――。東京・歌舞伎町のキャバクラ店で、客の男性から高額料金を取り立てたとして、経営者らが東京都の「ぼったくり防止条例」に違反した容疑で逮捕された。
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報道によると、このキャバクラの店長は10月上旬、客の40代男性に「金が払えなかったら、(拳銃で)はじかれるぞ」などと言って約63万円を請求した。男性は店にいた1時間に水しか飲まなかったが、領収書ではホステスが1杯6000円の酒を72杯飲んだなどとされていたそうだ。この店では8月の営業開始以来、「ぼったくられた」という相談が多数寄せられていたという。
今回のニュースで、「ぼったくり防止条例」というものを初めて知ったという人も多そうだが、どんな内容なのだろうか。一藤剛志弁護士に聞いた。
「いわゆる『ぼったくり防止条例』は、『性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例』という条例の一部のことです。歌舞伎町、池袋、新橋、秋葉原など、公安委員会の指定した区域で、お酒を提供して客を接待する店や、性的サービスを提供する店を規制する内容です。
同じような条例は他にも大阪府、北海道、福岡県などで制定されています」
条例では、どんなことが規制されているのだろうか。
「まず、料金や違約金等を、客に見やすいような形で、店の中に表示しなければならないとされています」
あいまいな料金は、トラブルの元だろう。
「また、客を勧誘する際に、実際より著しく料金が低いと誤認させるようなことを言うことや、違約金等について事実ではないことを言ったりすることも、禁止されています」
たとえば、客引きに「1時間3000円で飲み放題。追加料金はなし」と言われて店に入ったのに、結果的に1時間で5万円を請求された、というようなケースだろう。
「さらに、店は料金や違約金等を請求する際に、粗野または乱暴な言動を行ってはならない。また、客から預かった所持品を隠す等の行為もしてはならないと規定されています」
そうした行為に対する罰則はあるのだろうか?
「適切に料金表示をしなかったり、不当な勧誘・取り立てをした場合には、6月以下の懲役または50万円以下の罰金があります。
また、公安委員会によって、営業停止の命令が出される場合があり、その命令に違反するとさらなる処罰があります」
このように、「ぼったくり」は、厳しく規制されているということだ。
「これらの規定によって、いわゆるぼったくりが減少することを期待したいところですが、実際には、客側が後ろめたさから被害の届出をためらったり、警察に相談しても十分な証拠がなく、立件が見送られるケースが多いと思われます。
警視庁の統計によれば、東京都のぼったくり条例違反での検挙件数は、おおむね年間10数件で推移しており、必ずしも十分な取締りができているとはいえません」
確かに、言った言わないになると、なかなか難しいのかもしれないが・・・。
「しかし、今回のニュースのように、同じ店について何件も相談が寄せられる場合には、警察も動くのですから、被害にあった場合には泣き寝入りせずに被害を届け出てもらえればと思います。
また、被害にあった際、その場での録音は無理にしても、解放され次第メモを取るなどして、店側の具体的な発言をできるだけ多く正確に記録しておくと良いと思います」
このように、一藤弁護士は話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
一藤 剛志(いちふじ・つよし)弁護士
第二東京弁護士会多摩支部 副支部長、公益社団法人立川法人会 監事
事務所名:弁護士法人TNLAW支所立川ニアレスト法律事務所
事務所URL:http://www.tn-law.jp