アウディスポーツは19日、ル・マン24時間耐久レースで歴代最多の9回の勝利を飾っているアウディファクトリードライバー、トム・クリステンセンが11月30日にブラジルのインテルラゴスで決勝レースが開催されるWEC世界耐久選手権最終戦を最後に、プロドライバーとして現役を引退すると発表した。
クリステンセンは1967年デンマーク出身。1991年にドイツF3でチャンピオンを獲得した後は1995年まで日本を舞台に大活躍し、トムスやセルモ、ナビコネクション等さまざまなチームから全日本F3、JTCC、JGTC等に参戦。多くの勝利を重ねた。
97年からはヨーロッパに戻ったが、この年、ポルシェWSC95を駆りミケーレ・アルボレート、ステファン・ヨハンソンとともにル・マン24時間で総合優勝。1999年シーズン終了後、クリステンセンはアウディスポーツ入りし、2000年にはフランク・ビエラ、エマヌエーレ・ピッロとともにセブリング12時間の勝利をもたらしたほか、アウディに初のル・マン勝利をプレゼントした。
以降、ビエラ、ピッロとのトリオをはじめ、リナルド・カペッロや荒聖治、アラン・マクニッシュといったドライバーたちと組み、アウディやグループメーカーのベントレーを駆り、ル・マン24時間で前人未踏の9勝を達成。2013年はル・マンとWEC世界耐久選手権のチャンピオンを獲得したほか、過去にはアメリカン・ル・マンやDTMドイツツーリングカー選手権でも数多くの勝利を挙げた。
そんなクリステンセンに関してアウディスポーツは19日、プレスリリースを発行。WEC最終戦インテルラゴスがクリステンセンのプロドライバーとしての最後のレースになると明らかにし、引退後はアウディを代表する存在として、パートナーとして在籍すると発表した。
「15年もの間、最高のチームと世界で最もクールな自動車メーカーのためにドライブする権利に恵まれてきた。僕は素晴らしいチームメイトと、ファンタスティックな人々とともに仕事をすることができたんだ」とクリステンセンは語る。
「アウディとともに、僕は多くの勝利とタイトルを手にすることができ、数多くの忘れがたい時、感動的な瞬間を体験してきた。ル・マン24時間での勝利の数々は、アウディなしでは考えられなかったよ」
「このチームのドライバーという仕事を去ることは、とても難しい決断だった。しかし、その日は必ずやってくるんだよ」
また、アウディスポーツ代表のヴォルフガング・ウルリッヒは、クリステンセンに向け「当然ながら、彼のような注目すべき個性が引退することは、アウディスポーツ・チーム・ヨーストにとって、そしてすべての耐久レースにとっての損失だ」とコメントした。
「ただ、我々は彼の引退の決意を理解することができる。彼はアウディがプロトタイプレースを始めた頃から在籍する最後のひとりだった。トムはWECの現役世界王者であり、今も世界でも最速で、ベストなスポーツカードライバーのひとりだ」
「我々はドライバーとしての彼を失うことになるが、彼はこれからもその個性と経験で、我々を支えてくれる。我々は幸せに思っているよ」