PCサポーターが個人向け出張サービスで対応を求められるパソコンの不具合で多いものの一つに、「コンピュータウィルス・マルウェアなどの感染・駆除」があります。
これ、使用者本人が正直に症状や事情を申告してくだされば、それなりの対応も配慮するのですが、ごまかしにごまかしを重ねると、ちょっとした事件に発展するおそれもあります。今回はそんな話をしたいと思います。(文:光明隠歌)
「お前は壊す」と夫は妻にPCを見せず
ある家庭から出張要請を受け付けたコール担当者から、こんなメモが来ておりました。
「奥様より受電。ご主人のPCがウィルス感染とのこと。奥様は詳細を理解せず。PCのパスワードは机に記載済みとのこと」
念のためコール担当に確認したところ、「上司が『他の男性担当者だと面倒なことになりそうだから、光明さんにやってもらって』だって」とのこと。どういう意味だ、それ。
仕方なくお客様宅を訪問すると、在宅は奥様のみ。担当員が女性であったことに驚きつつも、「よかったわ! 男性が来たらどうしようと思ってたの!」と安心された様子。問題のパソコンに案内され、パスワードの場所を教えてもらったあと、奥様はこう言いました。
「私も見ていい? パソコンって興味があるんだけど、主人が『お前は壊す!』って言って見せてくれないのよね」
ウィルスの確認なのでよく分からない操作をしますけど、と言ったのですが、「いいの。興味があるだけだから」と答えます。私は何の気なしに「構いませんが」と答えたのですが、数分後、そのことを非常に後悔することになります。
パソコンを立ち上げた瞬間、早速ウィルスの症状が現れます。ただし、これは…!
「え…。あの人、こんなエッチなもの見てるの? ひどいわ!」
起きている症状や事情を正直に申告して
奥様の悲鳴も、いたし方なし。画面に次々現れるエロ画像のウィンドウ。マルウェアの一種です。パソコンを立ち上げたら裸のねーちゃんの画像がどんどん勝手に表示されるってのは、確かにびっくりするよね。
「奥様。これ、ウィルスなんですよ」
「え? あの人が見ていたものじゃないんですか?」
世の機微を理解しない若い男性技術者なら、「多分見ていたとは思いますが」と答えるところですが、奥様の気持ちを理解する私は流石にそうは言えません。「悪意のあるサイトを見たか、ソフトを気づかずダウンロードしたと思います」とだけ答えます。
「こういうのを見せて、相手をうろたえさせたところでお金を請求するか、もしくはカード情報などを抜き取るというウィルスかと」
それを聞いて奥様は「ああ、あの人騙されちゃったのね! よかったわぁ」とホッとした様子。「こんなの見てるのなら、離婚しようかと思ったの」とつぶやきます。あのー奥様、私は「旦那さまはエロサイトを見ていない」とは言ってませんけど…。
ということで今回は、問題のマルウェアを駆除し、他に何か感染してないかも確認し、奥様にサインを貰って私の対応は終了です。いやーよかった、離婚しなくて。
なお、帰社後に報告書を出したところ、コール担当の上司いわく「ほらやっぱり。男だったら全部本当のこと言っちゃうだろうなーと思って」。そこまで確信してるなら、そういう話を事前に振っといてくれよと思ったのはいうまでもありません。
トラブル対応依頼を考える既婚男性の方にお願いします。起きている症状や事情を正直に申告してください。そういう方には、「そういう事情」を加味した対応をすることも多いので、平によろしくお願いします。
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