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「すき家」バイトの反乱まねいた「鍋」再投入——反転攻勢のきっかけとなるか?

2014年11月18日 18:21  弁護士ドットコム

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深夜の1人勤務「ワンオペ」に代表される過酷な労働環境が批判を集めた「すき家」。「ワンオペ」は10月から廃止されて複数勤務体制となったが、そのために収支が悪化するという苦境に陥っている、そんな事態を打開するために、すき家は11月18日、あの「鍋」を全店舗で再投入することを発表した。


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すき家が今年2月に投入した「牛すき鍋定食」は、あまりにも手間がかかることに加え、説明が不十分だったこともあり、多くのアルバイトたちが疲弊し、離職していく要因となった。はたして、今回は大丈夫なのか。11月27日から本格的に「鍋」が復活するということだが、批判を浴びることなく、運用できるのだろうか。



●一部店舗で、11月上旬から試験的に投入


牛すき鍋定食は、全国各地にあるすき家・約2000店舗のうちの一部で、11月上旬から先行的に試験提供が行われている。11月17日夜、東京都内で先行提供している店舗に立ち寄った。



店の前には「鍋」を紹介するポスターが掲げられていた。店内にいた客は約10人、2人の店員が店舗運営にあたっていた。いすに座ると、机の上にも「鍋」を紹介するシールが貼られていた。提供時間は14時から翌朝5時まで。混み合う朝食や昼食の時間帯を避けようという考えのようだ。



店員に「鍋」を頼むと、準備が始まり、6分後に運ばれてきた。すでに出来上がったものがくるかと思いきや、肉が完全に生の状態だ。火は渡す直前につけられた。煮えるまでひたすら待つと、点火から10分くらいかかって、食べられるようになった。



値段は680円。牛丼の並盛りが270円であることと比べると高めに設定されているが、ほかの客も次々に鍋を注文していた。精算の際に店員に話しかけると「鍋は結構時間かかるんですよ」と申し訳なさそうにしていた。



●第三者委員会にも問題視された2月の「鍋の乱」


この「鍋」については、すき家の労働環境改善に向けた第三者委員会の調査報告書(7月公表)の中でも言及されている。



2月に初めて投入した「鍋」について、調査報告書では、「本部が牛すき鍋の仕込みに係る時間を甘く見積もって牛すき鍋投入を決定した結果、現場のオペレーションが十分機能せず、クルー(アルバイト)や現場社員のサービス残業・長時間労働が増加し、現場が疲弊した」と問題視している。



この「鍋」がすき家の人手不足に拍車をかけ、3月に多数の店舗が休業に追い込まれる事態へと発展してしまった。ネット上では「鍋の乱」ともいわれた。



当時の状況について、東京都内のすき家店舗で働く男性アルバイトは「仕込みが本当に大変でした。さらに、1回仕込んだものは12時間を過ぎると提供できないことが決められていたため、1日に2回仕込む必要があったんです。深夜ならまだいいのですが、午後のワンオペ時間帯に仕込みをやるとなると、きつかったですね」と振り返る。



●工場でパックを生産、仕込みの時間を大幅削減


今回の「鍋」も、すでにネット上で不安視する意見が出ているが、はたしては改善は図られたのだろうか。すき家を運営するゼンショーホールディングスの広報室は「前回の導入ではお騒がせしました。従業員にも負担を強いてしまったので、今回は慎重に導入を進めています」と説明する。



今回の「鍋」再投入における特徴は、「複雑すぎる」と批判を浴びたオペレーションを効率化したことだ。2月のときは、店舗に牛肉やうどん、野菜、豆腐が素材のまま届き、「鍋」ごとに仕込みをする必要があった。しかし今回は、「うどん、野菜、豆腐」を工場で1つの鍋用にまとめ、そのパックを店舗に届けることで、調理の手間を省いた。広報室によると、先行提供している店舗では、仕込みの時間が10分の1になったという報告もあるという。



前出の男性アルバイトも、勤務する店舗(鍋は未導入)で今回のマニュアルを見たというが、「これなら不安なくやれるのではないかと思います」と話していた。



また今回、「鍋」の値段と量が変わった。値段は、前回の580円(税込)から680円(税抜)にアップ。その代わり、具の量が30%増量された。さらに、生の肉を出すことで、客が自分で煮て、好きなタイミングで食べられるようにした。同社は単価を高いこの「鍋」を冬の目玉商品にしたいという狙いだ。



すき家が「ブラック企業」との批判を浴びる引き金になったともいえる「鍋」。今度は、アルバイトの「反乱」が起きることなく、反転攻勢のきっかけにつなげることができるのか。その行方に注目が集まっている。


(弁護士ドットコムニュース)