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芸能人につきまとう「スターストーカー」が逮捕――何を書いたら「やりすぎ」なのか?

2014年11月18日 12:51  弁護士ドットコム

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タレントの眞鍋かをりさんの公式ブログのコメント欄に10月中旬、「殺す」などと書き込んだとして、青森県に住む30代の男性が脅迫罪の容疑で逮捕された。SNSなどで芸能人につきまとう「スターストーカー」が起こした事件として注目を集めた。


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「スターストーカー」は、ツイッターやフェイスブックなどを使っているスターに対して、執拗にメッセージを送り続けるケースもあるようだ。アイドルグループHKT48の指原莉乃さんは、11月13日「なんかずっと指原にツイートしてくるヤバめの人が。。アンチとかではなく。。」とツイートしている。



スターのSNSアカウントには、応援や声援だけでなく、批判の声も数多く寄せられている。「有名税」という言葉もあるが、スターだからといって、どんな発言も堪え忍ぶことができるわけではないだろう。スターに対する発言は、どこまでやったら「やりすぎ」だといえるのだろうか。元検事で、インターネット上の法律問題にもくわしい落合洋司弁護士に聞いた。



●有名人相手ならいいというのは「誤解」


「根拠のある正当な批判は、言論の自由の行使として許容され、犯罪にはなりません。



しかし、脅迫・中傷などは、それとは話が別です。脅迫等の対象となったのが、一般人か有名人で、犯罪が成立するかどうかの要件に違いはありません。



たとえば脅迫罪は、対象者の生命、身体、自由、名誉、財産に害を加えると告げれば、成立します。



有名人が相手なら、犯罪が成立しにくくなるような誤解がされがちですが、まず、そういった誤解をしないようにすべきでしょう」



さらに、落合弁護士は続けて、次のように警鐘を鳴らす。



「むしろ、タレント活動をしている人物を脅迫した場合、脅迫罪だけではなくて、その人や所属する事務所に対する業務妨害であると評価され、業務妨害罪が併せて成立することもあり得ます。



無名の一般人に対するより、有名人に対するほうが、成立する犯罪がかえって増える可能性があることも知っておくべきです」



●誰が書いたかは「特定されると考えるべき」


ネットのおかげで、有名人に「話しかける」ハードルがずいぶん下がった。しかし、ネットが匿名だからといって、何を書いても良いと考えるのは早計だ。



「匿名でインターネットに書き込めば、身元がわからないだろうと、安易に判断されがちです。しかし、特に刑事事件の捜査では、裁判所の令状に基づいて広く情報が収集され、捜査に活用されます。したがって、発信者が、かなり高い確率で特定されると考えておくべきです」



最近では、ツイッターやフェイスブック社に対して、発信者情報を開示するよう、裁判所が仮処分命令を出したというニュースも報じられている。ネットが匿名だというのは、もはや古い考えになりつつあると言えそうだ。



落合弁護士は「家族や知人に面と向かって言えないような内容を、匿名だからといって他人のSNSに書きこむことはやめるべきでしょう」と注意を呼びかけていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
落合 洋司(おちあい・ようじ)弁護士
1989年、検事に任官、東京地検公安部等に勤務し2000年退官・弁護士登録。IT企業勤務を経て現在に至る。
事務所名:泉岳寺前法律事務所