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Tポイントカード「規約改定」ユーザーに疑念ひろがる――どう伝えるべきだったのか?

2014年11月17日 11:41  弁護士ドットコム

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レンタル大手の「TSUTAYA」などを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は11月1日、Tポイントサービスの規約を改定した。個人情報の提供方法について、関係企業による「共同利用」から「第三者提供」に変更したのだ。


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●ユーザーが情報提供を拒否できる「オプトアウト」を導入


CCCと関連企業が個人情報を「共同利用」していた時期には、ユーザーがそれを拒否する仕組みがなかった。しかし今回の変更により、CCCが他の企業に対して個人情報を「第三者提供」することとされたため、ユーザーが拒否できる「オプトアウト」の仕組みが用意されることになった。



つまり、ユーザーが「個人情報を他の第三者企業に渡さないで」と言えるようになったということだ。



しかし、ネットでは、「CCCが個人情報の第三者提供を開始した」という点に注目が集まり、「個人情報が勝手に第三者にばらまかれるのではないか?」など、疑問の声が多数上がっている。



今回の規約改定について、CCCは8月から、ホームページやメールなどで告知していた。しかし、多くのユーザーたちが疑問の声を上げ始めたのは10月下旬、オプトアウトを設定する方法がネットで広まったタイミングだった。



CCCのように多数の利用会員を抱えるサービス企業は、会員規約の改定などの際、どういった周知・広報活動を行うべきなのだろうか。また、告知期間はどの程度、とるべきなのだろうか。



●「共同利用」には脱法行為との批判がある


消費者問題にくわしい近藤暁弁護士は、個人情報の「共同利用」をめぐる問題について、次のように説明する。



「本来、企業が個人情報を『第三者提供』するためには、本人の同意を得たり、オプトアウト手続を用意するなど、一定の条件をクリアする必要があります。



しかし、個人情報を企業間で『共同利用』するという形式をとることで、こうした条件を回避するやり方が横行しており、個人情報保護法の規制を免れる行為だとして批判があります。



CCCは今回、提携先への個人情報の提供が『第三者提供』に当たるという実態を直視し、実態と形式を合致させたといえるでしょう。つまり、個人情報保護法の観点からすれば、今回の規約改定は望ましいものだったといえます」



●「ユーザーの心情に配慮した表現」を


それにもかかわらず、一部ユーザーからは疑問の声が上がったが、この点についてはどう考えるべきだろうか?



「個人情報の『共同利用』か『第三者提供』かという問題は、法律上の理屈の問題で、顧客であるユーザーからみれば一般的になじみのある問題とはいえません。



ユーザーにとっては、規約改定により生じる具体的な効果、つまりオプトアウト手続の導入により、個人情報の提供先を自ら選択できるようになったことが、関心の対象です。ここに焦点を当てた説明を行うべきであったと思われます。



ベネッセの個人情報流出事件などにより、第三者への個人情報の開示につき、ユーザーが敏感になっている時期に、『第三者提供』という表現を前面に出してしまったのは、いささか配慮に欠けていたといえます。



ユーザーの心情に配慮した分かりやすい表現を用いていれば、規約改定の3カ月ほど前の告知でも、今回のような混乱は生じなかったはずです」



近藤弁護士はこのように指摘したうえで、「今回の混乱は、個人情報の取扱いが、法律的な問題を超えた、より繊細な問題であることを表していると言えるでしょう」と話していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
近藤 暁(こんどう・あき)弁護士
2007 年弁護士登録(東京弁護士会)。主に企業の立場から、消費者法務(消費者契約法、特定商取引法、景品表示法、PL 法、個人情報保護法など)を中心として、IT法務、労働事件、債権回収など幅広い分野を取り扱う。

事務所名:近藤暁法律事務所
事務所URL:http://kondo-law.com/