2014年11月16日 12:51 弁護士ドットコム
携帯電話のディスプレイを高く掲げて、群衆が抗議の声をあげるーー。そんな不思議なデモが10月下旬、ハンガリーの首都ブダペストで繰り広げられた。政府が導入しようとした「インターネット利用税」への抗議行動だ。
【関連記事:もし痴漢に間違われたら「駅事務室には行くな」 弁護士が教える実践的「防御法」】
AFPの報道によると、ハンガリーはEU加盟国でも最も債務残高が多い国の1つで、政府は来年度予算の不足分を穴埋めするため、新しい税の導入を検討した。ネットでやりとりされるデータ1ギガバイトあたり150フォリント(約67円)を課税する方針を掲げたのだが、国民の猛反発を食らったというわけだ。
デモの参加者は5万人あまりにふくらみ、EUからも「実にひどいアイデア」「自由を制限する手法の一部」と酷評された。政府は結局、ネット税の方針を撤回せざるをえなかった。今やインターネットは社会インフラともいえる存在だが、課税することにはどんな無理があったのだろうか。近藤学税理士に聞いた。
「最近、私が契約したiPhoneの月額パケットの上限は、5ギガバイトです。したがって、仮に5ギガバイトを利用する人であれば、今回のインターネット利用税が導入された場合、67円×5ギガバイトで、1カ月335円程度の税金を支払う必要があります」
近藤税理士はこのように切り出した。
「しかし、この国民の反対の声は、金額以上に、政府が国民の自由を侵害することとへの拒否反応の要素が大きいのではないかと思います。
インターネット税で思い出したのは、18世紀のフランスで発案された『空気税』です。国民が吸う空気に課税しようとしましたが、国民の猛反対で頓挫しました」
今回のデモでも、ハンガリーの国民は「インターネットに自由を!」「国家に自由を!」とシュプレヒコールを上げながら、行進をしていたという。背景にはどういった事情が考えられるのだろうか。
「ハンガリーは第二次世界大戦中は、枢軸国の一員としてナチスドイツの支配下にありました。戦後はソ連の衛星国であったこともあり、日本人が想像する以上に、国民は自由の重みを感じているのではないかと思います。
ハンガリーでは、インターネット民主党という直接民主主義を標榜する政党も現れています」
ハンガリーのオルバン政権は、財政赤字の削減策として、2011年に塩分や糖分の高いジャンクフードに課税する「ポテトチップス税」を施行して、話題になったことがある。産経新聞の報道によると、IMFから「その場限りの税収増に依存しすぎる」との批判を浴びているようだが、今後はどんな手を打ってくるのだろうか。
【取材協力税理士】
近藤 学 (こんどう・まなぶ)税理士
京都府郊外でインターネットを活用し全員在宅勤務の税理士事務所を運営している。最近では、起業家向けビジネスボードゲームや資金繰表作成ソフトを開発するクリエイター型の税理士。3冊の著書と、1冊の翻訳書を出版している。
事務所名 : 近藤学税理士事務所
事務所URL:http://kondotax.jp
(税理士ドットコムトピックス)