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F1現地直送:あるエンジニアが「男らしい」と表現、なぜインテルラゴスでブリスターが大量に発生したのか

2014年11月14日 16:40  AUTOSPORT web

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ブラジルGPで発生したブリスター。輸送用に貼ったテームが剥がれてしまうほど「男らしかった」
ブラジルGPで多くのドライバーを悩ませたタイヤのブリスター。ブリスターとは、コンパウンド内の温度が異常に上がって火ぶくれができ、高速で回転するタイヤの遠心力によって火ぶくれ部分の表面のゴムが飛び散り、タイヤの表面にくぼみができる現象だ。写真に矢印で示した部分が軽度のブリスター。周辺にある丸いくぼみはタイヤの磨耗度合いを測るゲージだ。今回のブリスターは、マクラーレンの今井弘プリンシパルエンジニア・スペシャルプロジェクツが「男らしい」と表現するほど、派手なものだった。

 写真2枚目を見てほしい。なぜブラジルGPで、これだけ派手にブリスターが出たのか? ピレリのマリオ・イゾラ レーシングマネージャーは次のように分析する。

「ロシアGPの直前になってインテルラゴスの路面が再舗装されていることがわかり、急きょデータを送ってもらい、路面がスムースだということが判明した。そのためコンパウンドを当初予定していたハード&ミディアムから、1ランク軟らかいミディアム&ソフトに変更した。ところが、これによってリヤのグリップ力が増し、クルマはアンダーステア傾向となった。そうなるとフロントタイヤが横滑りしてオーバーヒートを起こしやすくなる」

 インテルラゴスは左回りのサーキット。左コーナーが多いインテルラゴスで、概ねブリスターが右フロントにできたのは、そういう理由からだった。右フロントにも発生していたドライバーがいたが、これは左コーナーで右側へスライドする際、キャンバーがついたタイヤ内側だけが異常発熱を起こしたためだと考えられる。

 しかし、ここでもうひとつの疑問が生まれる。なぜリヤではなく、フロントだけに発生したのかという疑問だ。かつてブリヂストンでタイヤを開発していた経験があるマクラーレンの今井エンジニアによれば「リヤタイヤはブリスターが起きる前にゴムが磨耗してなくなってしまうから」だと言う。ブリスターは、タイヤのコンパウンドが、内部に気泡ができるくらい厚みが残っていなければ発生しない。また、磨耗すればタイヤのゴムそのものの動きが抑えられるため、ゴム内部の温度が上がりにくく、ブリスターは発生しなくなる。レース序盤に多く見られたのは燃料搭載量の関係で、燃料が軽くなれば、そのぶんタイヤへの負荷が下がるので、ブリスターも発生しにくくなるというわけだ。

 ブリスターが起きたタイヤは、ピレリのテクニカルセンターへ運ばれ、検査されるため、表面をガムテープで覆うのだが(写真3枚目)、表面が穴だらけの場合、ガムテープの付着面積も小さくなるためテープが剥がれて落ちてしまうこともある(写真4枚目)。ブラジルGPで発生したブリスターは、それくらい「男らしかった」のである。

(尾張正博)