扶桑社が発行する「SPA!」といえば、1988年から発行されているサラリーマン御用達の週刊誌だ。日々の仕事に疲れ果てて何も考えたくない会社員の本能に、直接語りかけてくるような誌面には根強い支持者がある。
日本企業に働く生ける屍たちの生態に迫る「ワーキングデッド」(BSジャパン)。2014年11月6日の放送は、この「SPA!」の記事を過度に信用して、女性社員を追いかけて暴走する中年ソンビ社員を採りあげていた。
急に仕事に厳しくなる「アメと鞭」も披露
某化粧品会社では、「SPA!」を愛読する田中(38)が「SPA!過剰デッド」として女性社員たちに恐れられている。田中は部署にいるすべての女性社員を、「SPA!」に書かれている基準で品定めしていた。
「派手な金髪の女はヤレる」「カバンがガバガバな女はヤレる」「デスクが綺麗な女はヤレない」「笑い方が下品な女はヤレる」「実家暮らしの女はヤレない」
などなど。被害者のひとり、26歳の江守さんは「ずっと女性社員を、ブツブツ言いながら見てて怖かった…。ヤレるヤレないとか、一緒の空間に居たくなくて…」と、目に涙をにじませながら証言した。
さらに田中は、「女子への気遣いでデキる男を演出」という「SPA!」の口説きテクを鵜呑みにし、仕事中の女性社員に「大丈夫? 疲れてない?」「悩みない? いつでも相談して」などと、やたら声をかけてくる。
さらにやっかいなことに、「アメと鞭を与えて女を落とせ!」というテクまで実践してくるので、ターゲットにされると仕事にやたらと厳しくなり、何度もやり直しを命じられる。そして最後には「できると信じてたよ」と両肩にタッチされてしまうのだ。
最も凶暴化するのが、女性社員が1人で残業している時で、残業をねぎらうふりをして、しつこく食事に誘う。缶コーヒーの差し入れや「寒いだろう」と上着を掛けようとするのも、すべて「SPA!」の口説きテク。再現VTRではゾンビに扮したアンガールズ・田中卓志が「ヤラセろ」と暴言を吐いて女性社員を恐怖に陥れていた。
上司を小物呼ばわりする「俺超リスペクト」
ゲストの週刊SPA!編集長・金泉俊輔さんは、性に関する特集記事は大小10あるうちの1~2本であり、「決してエロ本ではない」と釈明。「SPA!」のモテ技は、デートを何回か重ねた段階で駆使するべきもので、「残業中の女子社員に使ってしまうのはTPOが分かっていない」と憤慨していた。
番組ではこのほか、異常なまでに自己評価が高く、他人の意見には一切耳を貸さない「俺超リスペクトデッド」も紹介した。フルーツポンチの村上健志が演じる某小売業・本社勤務の須藤(27)は、勤務中に電話もとらずコピーを頼んでも「俺の仕事じゃない」と肩をすくめる。
会社で「俺の夢ノート」を作っており、ノートには「目指せ1億円プレイヤー」という文の羅列が目撃された。どうやらサッカー日本代表の本田選手に憧れているらしい。
「イメトレ」と称する謎の瞑想をして会議に遅刻し、部長が「海外進出は社運がかかった仕事」と口にした途端、「俺の仕事。俺の出番」とつぶやいた須藤は、企画書を出してきたものの全く具体性に欠けている。
「もっと現実に照らし合わせてさ…」
そう苦笑いした上司の丸山さん(40)に、須藤は「コモノ(小物)」「俺はレジェンドだ。俺はできる、持ってるんだ」などと言い放った。部長に激怒され心が折れたのか、「ヤメル。俺もっと上のステージに行く」と社を後にしたという。
現実味のない回答に女性として不満
金泉さんは、俺超リスペクトは「20代前半しか許されないタイプ。30歳だと完全にアウト。即刻リストラの準備をしたほうがいい」と話し、「そんな社員を雇って放っておいた会社側のマネジメントにも問題がある」と語った。
週刊誌の現役編集長が真面目な顔で出てきたのは驚いたが、過剰SPAデッドの対処法で「セクハラとしてその上の上司や人事部に訴えましょう」と現実味のない回答をしていた点は、やっぱり男性誌の作り手なんだなあと、女性として不満に感じた。(ライター:okei)
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